中年期以降の腰痛や下肢痛では、椎間板ヘルニアと並んでもっとも原因として多いのは腰椎脊柱管狭窄症であると思います。
70歳以降では、坐骨神経痛の症状を出す疾患で一番多いとも言われています。
単に坐骨神経痛(ざこつしんいけいつう)としか診断されない場合もあります。
症状について
こんな症状があります。
1)腰痛、下肢痛(殿部から足の痛み)、特に、立ちっぱなしで痛み、腰をかがめたり、座って休むとすぐに楽になる。
2)歩き始めよりも、一定距離(多くは20メートル以上から100メートル以内)の歩行での、殿部から足への痛みの出現。
3)歩行で痛みが現れても、しゃがんだり、座って休むとすぐに症状は楽になり、また同じくらい歩ける。
※(間欠性跛行=かんけつせいはこう)という特徴的な症状がある。
4)しかし、同じ距離の歩行でまた症状が現れる。
注意) 間欠性跛行について
厳密にいえば閉塞性動脈硬化症などの血管の血流不足によって起きるものもあります。閉塞性動脈硬化症などは全身性の疾患であり、心臓で起これば心筋梗塞、脳で起きれば脳梗塞となり、非常に危険な状態ですぐに専門医による精査や治療が必要です。
とはいえ、腰部脊柱管狭窄症などの神経性の症状は、腰をかがめたり座って休むと症状が軽快または消失し、危険な血管性の症状は、座ったり屈まなくとも立って休んでいるだけで症状が軽快したり消失するという特徴があります。
当院のような開業鍼灸院でも、危険な閉塞性動脈硬化症などの除外は、丁寧な問診や、患側の動脈の拍動の左右差を診ることにより可能です。
また喫煙歴が長い方の場合なども念頭に置いて診察をすすめ、決して見逃しの誤診を起こさないよう気を付けています。
過去には70代の男性で閉塞性動脈硬化症を疑い総合病院の血管外科を紹介し、人工血管置換術の手術を行った方がいました。
上記の画像は、下肢痛を訴えて来院した60代後半男性のMRI画像です。
脊髄を真ん中から割ったように撮影したものですが、赤の帯は脊髄(脳から続く太い神経の帯)の通り道を強調しています。
腰椎の彎曲が強いあたり(赤矢印)で脊髄の狭窄がある、と精査を依頼した総合病院担当医師の指摘でした。
幸い、この患者さんは10数回の治療で歩行時の痛みなどが消失しました。
脊髄の病気と思われますと鍼灸ごときで治るのかどうか疑問を持たれる方も多いと思いますが、この病気の患者さんの多くは、手術を行わない保存療法を病院などで行っています。
腰椎の、脊髄が通る隙間が狭くなっているとは言え、多くはそこに慢性の炎症が起きていて、この炎症を改善できれば症状がなくなる場合が多いようです。
治療の頻度、限界について
●片足に痛みがある場合
鍼灸は良く効きます。
多くは10回程度の治療で改善します。
治療は、週に2回程度行います。
痛みのほか、しびれがある場合は、改善するまで少し長く かかる場合があります。
● 両足に痛みがある場合
片足だけに比べるとやや治療期間が長くなります。
最初の3週間は週に2回程度、それ以降は症状をみながら週に1回程度にします。
●両足に痛みやしびれがある場合
鍼灸よりも、病院などでの治療を優先した方が良いでしょう。
手術しないで済んでいる場合は、鍼灸を行うと良いでしょう。
治療期間は、最初の3週間は週に2回程度、それ以降は症状をみながら週に1回程度にします。
原因のはっきりしない坐骨神経痛についても、上記の対応を行っています。