腰痛について

だれでもが生涯のうちに、一度は腰痛が起きる

 

海外では、腰痛の生涯罹患率は84.1%、年間罹患率が48.9%(1998,Cassidy)という報告 があります。

Anderson(1992)は、『すべての労働者の60%はその仕事中に腰痛を一度は経験し、 その90%の者は短期間の就労不能の時期を有し、腰痛化の慢性化は10%ある』と報告して います。

このように、腰痛は人類にとって実になじみが深く、また痛む原因により多数の種類の腰痛があります。

これは、生物としての人間が二足歩行になって進化の途中であることと、寿命が飛躍的に延びたためだれでも加齢的変化(老化)を経験することが原因なのだと思います。

 

多くの腰痛は鍼灸治療が良い効果を現します。

いくつか代表的な腰痛を挙げ、鍼灸の適応・不適応について書いていきます。

 

その前に、鍼灸院に来院する前に病院などで診てもらった方が良い腰痛について触れておきます。

 

 

鍼灸院に来院する前に、一度病院などで検査を受けた方がよい腰痛

腰痛には、一刻も早く専門医による治療を受けた方が良いものもあります。

下記にあてはまる腰痛の方は、鍼灸治療をはじめる前にかかりつけの診療所や病院での検査をおすすめします。

 

  • ・一番楽な姿勢で、じっと動かないでいても痛みが起きる腰痛
  • ・寝返りではなく、ただ寝ていているだけでも痛む腰痛
  • ・痛みで眠れない腰痛、目が覚める腰痛

 

上記は、内臓性の腰痛の特徴です。

通常の腰痛は、『一番楽な姿勢』『この姿勢なら痛みが起きない』という、安息の姿勢があります。

内臓性の腰痛は、こうした楽な姿勢はありません。

内臓性の腰痛を起こしている原因が、良性のものからガンなどのような悪性のものまでありますが、これは鍼灸院程度では鑑別できませんので、こうした症状があればかかりつけの診療所か大きな総合病院に受診されるのを強くすすめます。

 

上記の特徴にに加え、

  • ・熱がある
  • ・尿が出ない
  • ・食欲がない
  • ・咳が出る
  • ・上記のような全身症状や固有の臓器の症状がある
  • ・過去に内臓の病気をした、手術したことがある

 

こうした条件があれば、なおさら内臓性の腰痛を疑います。

当院でも十分にお話を伺い、『当院の治療によって適切な医療を受ける時期を逸した』ということがないよう、気を付けて診察しています。

 

これらの症状や特徴がなく、『立つときに痛い』、『長く座っていられない』、『歩くとき痛い』、『寝返りで痛い』など、身体を動かしたときの腰痛は、どんなに痛みが強くても鍼灸治療の適応となります。

 

 

 

椎間関節性腰痛 (急性はぎっくり腰の一つ / 慢性腰痛としては非常に多い))

(症状)

急性や慢性で痛みの程度が変わりますが、朝起きて立ち上がる時痛い、靴下の着脱で痛い、などの症状が多いようです。

一般的に急性のほうが痛みが激しく、日常生活に著しい制限が出るようです。

また痛む場所に特徴があり、下記の図のようにウエストラインから下の、左右いずれか、また両方に痛みが出ます。

 

椎間関節性腰痛の発症部位の図

 

(病態)
原因として、下記写真の赤い円でマーキングしている部位にある『椎間関節部』といわれる部分の病変によります。

 

椎間関節性腰痛の原因部位


・急性発症 ぎっくり腰として一番多いようです。
椎間関節を包んでいる関節包といわれるスジの、急な過伸展や場合によっては微細な断裂が原因であるといわれています。

・慢性症
椎間関節を包んでいる関節包の老化による硬化や、関節面の軟骨の老化による関節症性変化(関節面の軟骨が薄くなったり、滑らかさがなくなること)で慢性の痛みを訴えます。

 

(治療)

当院の鍼灸治療の場合は、患部の消炎鎮痛処置だけではなくそもそもどうしてこの腰痛が発症したかを追求し、肩こり、首こり、背部のコリや疲労を特によく観察し、同時に治療していくことにより最終的に予防効果を持った治療を行っています。

 

(ご自宅での対応)特に急性発症のぎっくり腰の場合
まずは、冷シップを貼って安静にしてください。慢性の場合は温シップが良い場合がありますが、迷う場合は冷シップのほうが間違いありません。

入浴は、急性発症のぎっくり腰の発症当日は場合は入らないようにしてください。

特に急性発症の場合、飲酒は炎症を促進させますから禁忌です。

 

 

 

筋・筋膜性腰痛 (急性はぎっくり腰の一つ / 慢性症は筋肉の強い凝り感と痛み)

(症状)

腰というよりは背中に近いところに痛みが現れます(下の図を参照ください)

急性はぎっくり腰として、大変強い痛みが強く身動きも出来ない方がいらっしゃいます。

慢性は同じく背中に近いところが痛み、夕方など疲労が溜まると特に痛むなどのパターンが多いです。

また慢性は、筋肉の凝り感、鈍痛として感じることが多いです。

 

筋・筋膜性腰痛の起こる場所の図

 


(病態)

背中には、上半身を支える『脊柱起立筋』という筋群があり、長時間立っていたり、座ったままとか同じ姿勢でいると筋肉の血行が悪くなり、疲労物質が溜まってきます。

そのせいで筋肉が硬くなり、痛みが発現します。(慢性の筋・筋膜性腰痛)

また硬くなった筋肉は柔軟性が少なくなり、急な動きで筋ちがえを起こします(急性の筋・筋膜性腰痛=ぎっくり腰の一つ)

 

(治療)

この腰痛を訴える方はほとんどに首こり肩こりなどがあります。

当院では、痛む腰の筋肉部だけではなく、首や肩の筋肉の凝りを見つけてほぐすように治療します。

慢性の疲労が現れている方がほとんどですので、腰以外に疲労の溜まっている場所を見つけて治療すると治りやすいようです。

 

(ご自宅での対応)特に急性発症のぎっくり腰の場合
まずは、冷シップを貼って安静にしてください。慢性の場合は温シップが良い場合がありますが、迷う場合は冷シップのほうが間違いありません。

入浴は、急性発症のぎっくり腰の発症当日は場合は入らないようにしてください。

特に急性発症の場合、飲酒は炎症を促進させますから禁忌です。

慢性の場合は、温湿布と、一日20分程度のウォーイングなどが良いです。

 

 

スプラングバック (棘間靭帯損傷、棘上靭帯損傷 ぎっくり腰の一つ)

(症状)

下の図にあるように腰の真ん中が痛む腰痛。

急性症でぎっくり腰の一つ妊婦さんがなりやすい腰痛でもあります。

 

スプラングバックの痛む場所

 

(病態)

スプラングバックの病態

 

上の写真にある、赤い楕円でマーキングしたところに黒いテープを貼ってあります。

このテープは、上の椎骨棘突起と下の椎骨棘突起の間にある強力な靭帯である『棘上(棘上)靭帯・棘間(棘間)靭帯』を表しています。

上下の骨がずれないように固定する役目がありますが、急な体動などでスジ違いを起こしスプラングバックを発症する場合があります

 

(治療)

上の図の赤い楕円で囲った付近の初演鎮痛を目的に鍼灸を行います。

また冷湿布が有効ですので、治療後に貼ります。

治療後、ご自宅で適宜冷湿布を交換ください。

 

(ご自宅での対応)

まずは安静と冷湿布となります。

アルコールは禁忌です。

腰の中心が痛むことで脊髄などを痛めたと思われるかもしれませんが、足にしびれや麻痺がないことで判断できるはずです。

ひとまず安静にして、整形外科などに受診するほか、鍼灸でも適応となりますのでお問い合わせください。