「講演活動」カテゴリーアーカイブ

当院の治療についてその3(福岡で講演してきた内容メモ)

鍼灸治療は、専門医の西洋医学的治療とは異なり、一回ごとの治療効果の積み重ねによって効果を蓄積していくことを目指します。

当院に妊娠希望で来院される方の効果を見ていると、

・20代では1週間以内の治療を続ける。
・体外受精などで採卵の成績を向上させるとか、卵の質を改善する場合は2週で3回以上の治療を反復継続させる。
・38歳以上では、週に2回程度の治療を継続させる。

特に卵の質の改善に関することは、治療開始から3~4ヶ月間は治療の間隔は2週で3回~1週に2回以上の治療で良い効果が見られます。

たとえば、

・同じ採卵のための誘発方法で、採卵数が増える、胚のグレードが改善する。
・子宮内膜の厚さが改善する。

このような効果が得られやすくなります。

下記の図は、福岡での講演でお話しした治療の効果のイメージです。

お話ししたテーマは不妊症に関しての効果ですが、これは神経痛でも腰痛でも肩こりなど、当院で扱うすべての疾患や症状に当てはまります。

一回鍼灸を行って得られた効果は、ある程度の期間で薄れていきます。
不妊治療に関してですと、1回の治療の効果は1週間以上経過するとだいたい元に戻ってしまします。

そのため、一週間を過ぎないうちに次の治療を行うのが良く、前回の治療効果が残っているうちに次の治療を行っていくと、やがて妊娠可能な状態とか、卵の質が良くなる卵巣の状態や、子宮の内膜が厚くなる子宮周辺の血行改善の得られた状態になっていきます。

体の状態そのものを改善していきますから、ある程度体の状態が良くなると、その後は週に一回程度の治療でも良い状態を維持できるようになります。

当院の治療についてその2(福岡で講演してきた内容メモ)

(その2)

当院では首肩の凝りなどの、時には些細と感じるようでも体に現れている苦痛を治療することにより、たとえばホルモンの環境の改善を目指します。これにより自然治癒力や免疫の調整ができると考えています。

また妊娠しにくい、妊娠しても原因不明の流産を繰り返す、といった現象には着床や子宮の改善を目指し、三陰交という足首にあるツボと箕門や陰胞という太ももにあるツボを使い鍼を行います。

妊娠せずに繰り返し月経が起きているという事は、体には免疫的に妊娠しにくい、着床しにくいなどの要因が起きてきます。
この治療には腰部の凝りを治療することと、上記の鍼が効果があります。
※参考 → 原因不明不妊について考える(子宮内膜症編)

繰り返す月経により、子宮内膜症という病気が多くなります。自覚はなくとも、軽症のものを含めると、当院にラインされる方には大変多いと感じています。

子宮内膜症の主な症状は、『続発性の月経痛』と不妊です。
続発性の月経痛とは、初潮の頃はひどくなかった月経痛が、例えば高校を卒業してからとか、30歳になってからひどくなったとか、だんだんと悪くなってきたものを言います。
これらの症状を持った方に子宮内膜症の方は多くいらっしゃいます。

子宮内膜症は進むと卵巣チョコレート嚢腫などがあり、これも不妊の原因になりますが、初期のころの腹水の免疫異常が問題になってきます。

下記は子宮内膜症の腹水がもたらす不妊の原因の主な研究です。

子宮内膜症の発症は妊娠出産回数と密接な関係があります。
一度も出産していない方はそれだけ月経の回数も多く経験していて、それが原因になると考えられています。
下記は東大医学部産婦人科元教授の堤治先生著書の『生殖医療のすべて』からのデータで、すでに子宮内膜症と診断された方から、初潮からの年齢と妊娠回数から発症率を調べたものです。

赤丸は、例えば13歳で初潮があり、1回も出産しない35歳の方の場合、と示してみました。いかに高率で子宮内膜症に罹患しやすいかがわかることと思います。しかも軽症ほど腹腔の免疫異常が起きやすいのです。

子宮内膜症について鍼灸がどれほど効果があるかを示すデータや研究はありませんが、月経痛が改善することと、自然に妊娠される方が増えることから、なんらかの効果があると考えます。

また最近話題になる卵子の老化について、卵巣機能改善については陰部神経刺鍼法に通電を加えた治療法で良い効果がありますが、当院では腹部にレーザーを行っています。

当院では4台あるベッドですべてレーザー治療ができるよう、上記のレーザー治療機を備えています。

卵巣内で成長していく卵胞のまわりには非常に細かい血管が多数あります。
この血管が老化により減少したり、血行が悪化していくと、発育卵胞に十分な栄養が行きにくくなる、卵子の老化の原因の一つであると日本の卵子研究の第一人者・東北大学農学部の佐藤英明教授がニュートン2012年10月号にて書いておられます。

低反応レーザーを使うと、卵巣内に新生血管ができることは、『不妊診療のための卵子学』にレーザー医療の世界的権威である大城クリニック院長の大城俊夫先生が書かれています。

陰部神経刺鍼により、卵巣の血行が改善する可能性については、日本の不妊鍼灸の権威・明生鍼灸院(名古屋)の学会発表などから推測でき、当院でも明生鍼灸院の直接の指導により、この治療を取り入れて行っています。

新生血管ができて、しかも血行改善ができるレーザー+鍼灸は大変良い効果があり、40歳代半ば近くの方でもこれまで体外受精などでよい卵が出来ず、また採卵できなかった方などが大きく改善されています。

このような効果は、一回ごとの治療の積み重ねであり、周期ごとに完結する西洋医学とは違うところであり、明確に患者さんに説明しなければ効果が得られないうちに脱落する、と説明しました。

(その3につづく)

当院の治療についてその1(福岡で講演してきた内容メモ)

10月10日の、福岡日帰り講演の内容を書きます。

当院の治療の基本的な考え方、また女性不妊治療での骨格となる部分です。

写真右は、生後15日目の私。中の写真上段右は私の母:三瓶美恵子(故人)、抱っこされているのが弟、その左は父:三瓶悌一(故人)、下段右は祖母:三瓶ノブエ、抱っこされているのが私) 写真左は、小学校入学の時の私。三瓶治療院の看板前にて。

当院の前身となる『三瓶マッサージ』は、昭和30年代に福島県甲子温泉に温泉マッサージ業として開業しました。

当初から祖母が視覚障害のある従業員を5~8名雇用しての温泉マッサージ業を営業し、後にマッサージ師であった私の父が鍼灸師を目指して神奈川の鍼灸専門学校に入学し、鍼灸師となります。

温泉マッサージ院と並行し、祖母は白河市に鍼灸マッサージ院(写真左:三瓶治療院)を開業し、すでに父より早く鍼灸師となっていた母の弟に治療を任せていました。

温泉マッサージは、鍼灸とは違い純粋な医療ではなく、慰安業と言ってよいと思います。現在のリラクゼーションでしょうか。
温泉に来てお湯につかり、のんびりしておいしいごちそうを食べ、凝っているところ、疲れているところを揉んでもらって英気を養う、というような感じです。

父は盲目のマッサージ師上がりの鍼灸師でしたから、お客さん(温泉マッサージ業では患者さんと言いません)の全身の凝りや疲れを揉みながら把握し揉み解す、という施術行為からそのまま後年の鍼灸治療に発展していったようでした。

マッサージは術後の爽快感があります。
また凝っているところ、疲れているところのマッサージは実に心地よいものです。

日本式の鍼は毛髪のような細い針を使います。
これも凝っているところに刺入すると心地よい感覚があります。

心地よい刺激・・・
日本式の鍼灸治療の効果について、スウェーデン・カロリンスカ研究所で鍼灸を研究しているT.Lundeberg博士は、『日本式の鍼は、(膝痛治療で)脳の報酬系を賦活し、効果を現している可能性がある』と2006年に京都で開催された国際学会で講演されました。

スウェーデンのカロリンスカ研究所とは、ノーベル賞医学生理部門の選考委員会がある世界最大の医科大学です。

心地よい、気持ち良いという刺激(脳への報酬)があると、ドーパミンやセロトニンといった体に良い物質が脳で生成されて、痛みを和らげたりする、というものです。

当院では、不妊治療だけではなく、腰痛や肩こり、また胃の痛みなどの内科的疾患の鍼灸治療でも、鍼灸の効果はこの報酬系の強い関与があると考えます。

女性不妊については、下記の視床(間脳)~脳下垂体~卵巣(卵胞の成長・排卵)の負のフィードバックの改善に、鍼灸による報酬系の関与が関係していると考えます。

不妊の患者さんに関わらず、どこかにストレスがあると、たいてい首や肩の凝りなどを持っています。
この凝りに対して日本式の丁寧な、優しい鍼を行うことにより、報酬系が刺激され、たとえばドーパミンなどが放出されると考えます。

ドーパミンは排卵を抑制するプロラクチンに拮抗(対抗)します。患者さんの中には週に一回、たいていは土曜日にテルロンやカバサールといったドーパミン作動薬を服用している方もいらっしゃるでしょう。

鍼灸で凝りや些細な不調を治療すると、こうしたホルモンの分泌に良い影響が得られると考えます。

(その2に続く)

当院の治療についてその1(福岡で講演してきた内容メモ)

10月10日の、福岡日帰り講演の内容を書きます。

当院の治療の基本的な考え方、また女性不妊治療での骨格となる部分です。

写真右は、生後15日目の私。中の写真上段右は私の母:三瓶美恵子(故人)、抱っこされているのが弟、その左は父:三瓶悌一(故人)、下段右は祖母:三瓶ノブエ、抱っこされているのが私) 写真左は、小学校入学の時の私。三瓶治療院の看板前にて。

当院の前身となる『三瓶マッサージ』は、昭和30年代に福島県甲子温泉に温泉マッサージ業として開業しました。

当初から祖母が視覚障害のある従業員を5~8名雇用しての温泉マッサージ業を営業し、後にマッサージ師であった私の父が鍼灸師を目指して神奈川の鍼灸専門学校に入学し、鍼灸師となります。

温泉マッサージ院と並行し、祖母は白河市に鍼灸マッサージ院(写真左:三瓶治療院)を開業し、すでに父より早く鍼灸師となっていた母の弟に治療を任せていました。

温泉マッサージは、鍼灸とは違い純粋な医療ではなく、慰安業と言ってよいと思います。現在のリラクゼーションでしょうか。
温泉に来てお湯につかり、のんびりしておいしいごちそうを食べ、凝っているところ、疲れているところを揉んでもらって英気を養う、というような感じです。

父は盲目のマッサージ師上がりの鍼灸師でしたから、お客さん(温泉マッサージ業では患者さんと言いません)の全身の凝りや疲れを揉みながら把握し揉み解す、という施術行為からそのまま後年の鍼灸治療に発展していったようでした。

マッサージは術後の爽快感があります。
また凝っているところ、疲れているところのマッサージは実に心地よいものです。

日本式の鍼は毛髪のような細い針を使います。
これも凝っているところに刺入すると心地よい感覚があります。

心地よい刺激・・・
日本式の鍼灸治療の効果について、スウェーデン・カロリンスカ研究所で鍼灸を研究しているT.Lundeberg博士は、『日本式の鍼は、(膝痛治療で)脳の報酬系を賦活し、効果を現している可能性がある』と2006年に京都で開催された国際学会で講演されました。

スウェーデンのカロリンスカ研究所とは、ノーベル賞医学生理部門の選考委員会がある世界最大の医科大学です。

心地よい、気持ち良いという刺激(脳への報酬)があると、ドーパミンやセロトニンといった体に良い物質が脳で生成されて、痛みを和らげたりする、というものです。

当院では、不妊治療だけではなく、腰痛や肩こり、また胃の痛みなどの内科的疾患の鍼灸治療でも、鍼灸の効果はこの報酬系の強い関与があると考えます。

女性不妊については、下記の視床(間脳)~脳下垂体~卵巣(卵胞の成長・排卵)の負のフィードバックの改善に、鍼灸による報酬系の関与が関係していると考えます。

不妊の患者さんに関わらず、どこかにストレスがあると、たいてい首や肩の凝りなどを持っています。
この凝りに対して日本式の丁寧な、優しい鍼を行うことにより、報酬系が刺激され、たとえばドーパミンなどが放出されると考えます。

ドーパミンは排卵を抑制するプロラクチンに拮抗(対抗)します。患者さんの中には週に一回、たいていは土曜日にテルロンやカバサールといったドーパミン作動薬を服用している方もいらっしゃるでしょう。

鍼灸で凝りや些細な不調を治療すると、こうしたホルモンの分泌に良い影響が得られると考えます。

(その2に続く)

福岡で講演してきました(不妊治療のススメ)

10月10日は、福岡で開催された第12回日本鍼灸師会全国大会福岡大会の青年委員会講座で講演をさせていただきました。

私も日本鍼灸師会の青年部会時代から委員を12年やらせていただき、今でも青年部のOBと強く自覚しています。
かわいい弟、妹たちへの鍼灸師としてやりがいのある分野を提示させていただく内容としました。

前日は娘の婚礼があり、すべて終了してから東京へ移動。
学会当日は京浜東北線の始発に乗り、浜松町からのモノレールも始発。
飛行機はJALの一番機。

窓から見える富士山はまさに足元!
いつも大阪に行くときのルートですが、こんなに近くを飛ぶことは初めてでした。

会場に着くと懐かしい方や、おなじみの方。
左から青森県鍼灸師会の竹田先生(総務部長)、橋本先生(会長)、京都府鍼灸師会の山村先生。
山村先生とは、日本鍼灸師会青年部会時代から、ずっと青年部活動で一緒でした。お変わりなく、安心しました。

10時半から正午までの講義時間でした。
授かることへのお手伝いができることは、鍼灸師として一生の喜びになります。
やりがいのある分野の紹介と、ちょっとだけ当院の治療を紹介させていただきました。

お話しした内容は、次回以降に書いていたいと思います。

11月27日(日)には、『社会に貢献する不妊治療』と題して、盛岡で開催される全日本鍼灸学会東北支部B講座で講義させていただきます。

 

福岡と盛岡で講演してきます

50回の節目にあたる東北鍼灸学会を無事終えても秋の学会シーズン真っただ中の当院です。

10月10日には福岡で第12回日本鍼灸師会全国大会福岡大会に参加し、光栄にも青年部講座『不妊鍼灸のススメ』の講演を担当することになりました。

また11月27日日曜日は盛岡で開催される全日本鍼灸学会東北支部B講座で『社会に役立つ不妊治療』の講演を担当させていただくことになりました。

10月の日本鍼灸師会主催の全国大会は、私も12年間日本鍼灸師会の青年部委員をやらせていただいたこともあり、大変思い入れのある学会となります。
当院の治療の紹介のほか、日ごろ不妊に対して思っていること、また若き鍼灸師の先生方へ特別なメッセージを添えて90分間お話ししたいと思います。

11月の盛岡での講座では、おなじく当院での治療の実際を実技をまじえてご紹介させていただき、少子高齢化の予想される東北の近未来の社会について鍼灸師が役立てるステージを提示したいと思っております。

公開講座の新聞記事(鍼灸柔整新聞)

だいぶ日が過ぎてしまいましたが、京都での公開講座の内容を鍼灸柔整新聞に取り上げていただきました。

講義の内容がよく書かれています。

鍼灸柔整新聞(一寸法師ハリ治療院・中沢先生提供)の記事。 クリックで大きくなります。

新聞記事は、福島県鍼灸師会会長・一寸法師ハリ治療院・中沢先生より頂きました。

クリックで大きくなりますので、お時間のある時にお読みいただければ幸いです。

原因不明不妊について考える(子宮内膜症編)

(はじめに 京都での不妊鍼灸ネットワーク公開講座で講義した内容を簡単に紹介します)

妊娠を希望して来院する女性患者さんを治療するにあたり、なぜこの方は妊娠、出産しないで当院に来たのであろうか、とまず最初に考えます。

患者さんによっては、専門医で診察や治療を受けている方もいらっしゃるし、中には体外授精を主とした高度先進生殖医療を受けている方もいらっしゃいます。

排卵障害や黄体機能不全、卵子の老化や卵巣機能不全など、病名ともとれるし単なる周期ごとの機能的な変調とも思える病態名を、患者さんはなんとなく抱えいるようです。

鍼灸師側からすると(女性)不妊治療は子宮の血流改善、内膜環境、また卵巣機能向上、卵子の質の改善を掲げて治療している場合が多いように思う。一方、鍼灸をよく知る高度先進生殖医療を提供する専門医から話を聞くことが何度かあり、多くの医師はもっとマクロの、体全体の底上げのような効果を鍼灸に求めていることが多いようです。

(女性)不妊の原因は判明するだけでも多岐に渡るりますが、それが生殖年齢を通してずっと抱え続けるものでないことは、みんさん周知のことでしょう。

ここで、案外見過ごしがちな月経痛を主訴とする『子宮内膜症』について京都の公開講座では触れてみました。

子宮内膜症の概要:本来子宮の内面に増殖する子宮内膜が、腹腔内など異所性に増殖する病態で、妊娠に対してさまざまな悪影響を及ぼします。
子宮内膜症による不妊の要因。実に様々な要因があります。しかも一般的には原因不明とされる場合が多いようです。

子宮内膜症は、進行した症例ではチョコレート嚢腫や骨盤内癒着などがあり、それぞれ医療の対象となりますが、軽症であれば専門医でも痛み止めの処方で終わることが多いようです。

 

実は、重症の子宮内膜症よりも軽症のものが免疫的な不妊をもたらしやすい、と言われています。子宮内膜症そのものに対しての鍼灸の効果は不明ですが、痛みの改善などは大きな効果があります。もしかしたら、(鍼灸による)炎症状態改善は、子宮内膜症によって引き起こされている強い生理活性の改善効果があるのではないかと思います。

しかし、子宮内膜症はその病態のステージから妊娠にさまざまな悪影響を及ぼすことがあります。子宮内膜症の主訴は、『続発性の月経痛』です。この主訴は鍼灸でよく軽快します。

今後、月経痛の改善から子宮内膜症に対する鍼灸治療の効果、またそれによる妊娠率向上への研究が進むことを願っています。

次回は、子宮内膜症の不妊に関する文献を紹介します。