「不妊症・子宝治療」カテゴリーアーカイブ

当院の不妊・妊活新患者の1年以内妊娠率について

私、三瓶はこのたび一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)の会長に選出されました。

上記ホームページはまだ前会長の徐大兼先生(渋谷・アキュラ鍼灸院)のままですが、近々更新いたします。

もともと、京都の中村一徳先生(なかむら第二針療所)と徐大兼先生、三瓶の3人で不妊鍼灸ネットワークという、不妊症に特化した研究会を作りました。その後法人化してJISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)を設立し、今に至ります。

JISRAMでは効果のある鍼灸術を普及するために研究している団体ですが、会員の治療による妊娠率や採卵成績改善などを調査しています。

そこから真に効果のある技術を世界に広めていきたい、そういう思いで活動しています。

当院患者さんの妊娠率を調査しました。

当院で2023年8月から翌年2024年7月末までに不妊治療を開始した方のデータをまとめました。

この1年間に挙児を希望して来院した方は14名。病院で健康保険が使えるようになり、3年前から不妊患者が激減したわけで、このような数字になりました。

自分でもびっくりしますが(;^ω^)

14名のその後(妊娠率を算出するために)

鍼灸を開始して1回目からすぐ妊娠するわけではありません。
もしそういう方があれば、鍼灸が関係なく妊娠されたのでしょう。

自然妊娠は、週に1回欠かさず治療してだいたいが治療2ケ月後~3ヶ月くらいから妊娠される方が出てきます。

そのため、下記の条件を設けました。

  • 最低限1週に1回の治療を3ヶ月(90日)以上続けた方。
  • 凍結胚移植は、胚移植前1ヶ月以上前から鍼灸を開始した方。
  • 算出期間は治療開始後1年以内以上を対象にしました。

14名のうち、5名は3ヶ月以内に来院がなくなり脱落として妊娠率算定外となりました。

内訳は

脱落(90日以内に来院なし=除外) 5名

  1.  37歳 続発性不妊 不妊歴4年 治療期間62日 7回で脱落
  2.  40歳 原発性不妊 不妊歴1年 治療期間43日 10回で脱落
  3.  31歳 原発性不妊 不妊歴3年 治療期間23日 4回で脱落
  4.  41歳 原発性不妊 不妊歴4年 治療期間30日 8回で脱落
  5.  43歳 原発性不妊 不妊歴14年 治療期間40日 6回で脱落

治療開始直後のため除外(治療開始後90日以内のため除外) 2名

  1.  34歳 続発性不妊 不妊歴 3年 治療期間80日 治療中
  2.  40歳 原発性不妊 不妊歴6年 治療期間40日 治療中

以上、5+2名=7名を除外しました。

 

残り7名について妊娠率を調べました。

無効例 2例

  1.  33歳 原発性不妊 不妊歴4年 治療期間100日 治療17回で来院なし
  2.  23歳 原発性不妊 不妊歴2年 治療期間120日 治療22回で来院なし

妊娠例 5例

  1.  33歳 原発性不妊 不妊歴2年 ①治療開始155日24回で自然妊娠・ただし流産 ②その後60日(総治療回数36回)で再度自然妊娠 妊娠24週で経過良好で治療終了
  2.  35歳 原発性不妊 不妊歴5年人工授精治療中に来院 ①治療開始70日9回で自然妊娠 ただし流産 ②その後70日(総治療回数19回)で再度自然妊娠 妊娠39週まで治療。
  3.  32歳 不妊歴6年 凍結胚移植のため治療40日治療6回で妊娠
  4.  27歳 不妊歴3年 凍結胚移植のため50日治療9回で妊娠 経過良好で妊娠12週で終了
  5.  41歳 不妊歴12年 体外受精のため来院 治療94日15回で良好胚採卵・凍結 当院来院後初の胚移植(2回目)で総治療回数30回で妊娠 経過良好

当院の治療開始後1年間の妊娠率は70.1%

以上を計算すると、当院治療開始後1年以内の妊娠妊娠率は5/7で70.1%になります。

脱落の5例については、もう少し治療していていれば妊娠していた方も数名いたと思われ、非常に残念です。総じて不妊治療に来院する方たちはモチベーションの高い方と、何事にも飽きやすいモチベーションの低い方の2極化傾向が見られます。

今後はインフォームドコンセントをしっかり行いたいと思います。

無効例の2名に関しては、専門医を紹介しての連携治療を予定して所での来院中断でした。この方々も妊娠は十分可能だったはずで、非常に残念でした。

 

女性不妊症への鍼灸のエビデンス (主に体外受精での効果)

女性不妊症の治療法としての鍼治療:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタアナリシス

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35222669/
(Kewei Quanら、PubMed 2022年2月公開)

論文内容:2021年4月までのEMBASE、PubMed、コクランライブラリ、Web of Scienceなどの関連研究などデジタルデータベースから検索 真の鍼治療、プラセボ(シャム鍼)、無治療で27件の研究(7,676人)について臨床妊娠率(CPR)と生児出生率(LBR)を比較した。

結果:出生率(RR = 1.34; 95% CI (1.07, 1.67) ; P=<0.05)、臨床妊娠率(RR =1.43; 95% CI (1.21, 1.69)) ; P < 0.05)、生化学的妊娠率 (RR = 1.42; 95% CI (1.05, 1.91); P < 0.05)、 継続妊娠率 (RR = 1.25; 95% CI (0.88, 1.79); P < 0.05)

要約:7,676人の女性不妊の患者を研究した27件の論文を調査した結果、臨床妊娠率は1.43倍、出生率は1.34倍、妊娠継続率は1.25倍に、鍼を行わなかった群に対して鍼を行った群が高かったということです。

このメタ解析のサブグループの研究は、ほとんどが体外受精での胚移植直前・直後に鍼灸を行った際の効果です。

体外受精の直後のみに鍼灸を行った場合でも効果はありますが、事前にさまざまな検査などを行う必要があります。

 

当院で胚移植の成功率を高める治療をご希望の方へ。

すでに凍結胚などがあり、その胚移植の着床率を向上させたい、という治療をご希望の場合は、最低でも胚移植予定の最低1ヶ月前から鍼灸治療を開始します。(米国医学会では3ヶ月前からの鍼灸開始を推奨しています)

『胚移植直後から鍼灸治療を始めたい、』という方がときどきいらっしゃいますが、効果的な治療が不可能なため、胚移植前から治療を始めるようおすすめいたします。

 

体外受精 鍼灸により採卵数が増えたり、胚盤胞が増えたりする科学的根拠

9月の診療案内
https://sanpei89in.com/blog/?p=4594

9月15日(日)、16日(月・振替休日)は午前中診療します。
9月22日(日)、23日(祝)は休診となります。
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特に体外受精を受けている患者さんで、採卵数が少ないので多くしたいとか、卵子のグレード・質を向上させたい、と言って来院される方がおられます。

もちろん患者さんの年齢や体質にもよりますが、多くの患者さんで一定期間しっかり鍼灸治療を行うと、採卵できる数が増えたり受精率が向上したり凍結時のグレードが改善します。

卵巣の中で卵が育っていくとき、より良い1個の卵だけを排卵させるため、最初にたくさんの卵が育ち始めます。

年齢にもよりますが数千個~数百個が一斉に育ち、そのうちの一番優れた1個だけが残り、ほかはすべてアポトーシス(細胞死)を迎えて閉鎖していきます。

インドネシア大学Ayu Cintani Kusumaらの研究。
(Mary Ann Liebert 2019)

鍼灸(電気鍼)を行うと受精率が+68%高まります。

また鍼灸を行うと、卵細胞がアポトーシスを促進するBaxタンパク質が大きく減り、1/8になり、卵の成長促進因子であるBCL-2タンパク質が1.5倍に増えます。

こうした科学的根拠があり、鍼灸を行うと成長過程でアポトーシス(細胞死)により減る卵細胞が減り、結果的に採卵数が増えます。

ストレスの緩和が第一 不妊治療 酸化ストレスにも鍼灸は効果があります。

鍼灸での不妊治療は、さまざまな効果から成り立っています。

排卵障害(PCOS=多嚢胞性卵巣症候群含む)、月経痛、卵の質の改善、体外受精では獲得杯盤数の増加、胚盤胞グレードの改善、など。

男性では男性不妊への鍼灸の効果としては、乏精子症(精子の数が少ない)、精子無力症(精子の運動がない、または極端に悪い、運動精子が少ないなど)などの改善があります。

女性不妊でも男性不妊でも専用の治療法がありますが、根本的にはストレス状態の改善が基本となります。

女性の場合は、視床(間脳)~脳下垂体~卵巣の働きによる卵の成長・排卵のサイクルに深く関与します。

また、自然妊娠や人工授精での妊娠に深く関わる卵管の運動・軽度の閉塞の改善にストレスの改善は必須です。

日本の厚生労働省に当たる省庁がアメリカにあり、米国国立衛生研究所(NIH)と言います。そこへ全世界の医学の論文のデータベースがあります。

そこでストレスに対する鍼灸の効果を掲載している論文などを調べてみました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=stress+acupuncture

今は便利なもので、ブラウザに英語の翻訳機能がありますから、英語の論文もまぁまぁの日本語で読むことができます。

トップに出てきた『虚血性脳卒中治療における酸化ストレスの調節における鍼治療のメカニズム』の論文から、酸化ストレスに鍼灸が効果がある(可能性がある)ということです。

酸化ストレスとは、要は老化による体の傷み具合ですが、卵や精子のDNA損傷にも大きな影響があります。
参考:https://x.gd/4rXJr

せっかく妊娠しても流産を繰り返すとか、体外受精で良い胚にならないなど、鍼灸で効果を実感しますが、原因として酸化ストレスが考えられる不妊に鍼灸は良いと考えます。

 

 

 

東北鍼灸学会にて

8月31日、9月1日に、第55回東北鍼灸学会が開催されました。

東北6県の鍼灸師会で開催する年に一回の学会で、仙台の仙台赤門医療専門学校が会場でした。

各県代表の一般口演発表では、那須塩原市・西那須野の赤田山はり・きゅうマッサージ接骨院の高橋吉明先生が、医療連携をテーマに発表されました。

ご夫妻での発表、お疲れ様でした。

赤田山はり・きゅうマッサージ接骨院
栃木県那須塩原市上赤田238−437
電話0287-46-5598

赤田山はり・きゅうマッサージ接骨院の髙橋先生夫妻は、お二人とも私の愛弟子です。当院独自の不妊鍼灸も深くすべて伝授しています。

卵質の改善、採卵成績の改善に用いるレーザー機器、超音波治療器も完備して非常に高価の高い卵巣機能改善も行っています。

 

学会理事会での豪華弁当!

私は役員なので、学会理事会で美味しい豪華弁当をいただきました。

懇親会では、利酒コンテストがありました。

楽しい学会でした。

来年は福島県で開催になります。

不妊鍼灸・患者さんへの対応 いろいろな思いの患者さん

9月の診療案内
https://sanpei89in.com/blog/?p=4594

9月8日(日)は午前中診療します。
9月22日(日)、23日(祝)は休診となります。
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カナケンセミナーや、わが福島県鍼灸師会でのオンライン不妊症セミナーで話した内容をもうちょっと書いていきます。

不妊治療を受けに患者さんが来られるわけですが、みなさん当たり前ですが妊娠出産を希望しておられます。

しかしごく一部ですが、すっかり妊娠をあきらめていらっしゃるかたもおられます。さまざまな治療を行ったけど、妊娠できなかった、という方もいらっしゃるし、そもそも夫が非協力的で、専門医の治療に進めない、という方もこれまでいました。

中には体外受精まで行ったけど妊娠できなくて、姑さんに『うちの息子はどこも悪くないんだけど妊娠できないから』と言って、お嫁さんを連れて来たこともありました。

諦めたけど、鍼灸だけでも続けていれば、周囲への『私はまだ頑張っているんです』という言い訳にになる、と考えたのででしょうか。真面目に通われる方もおられます。

ところが、そうした患者さんを治療していると、体調がよくなり妊娠できるかもしれないと前向きになり、また専門医での治療を目指す方がおられます。

またそうした中に自然妊娠される方が、少なからずおられます。

当院の不妊治療の特徴は、人工授精を行っている方、体外受精を行っている方でも自然妊娠される方がおられることです。

鍼灸を受けに行くことが苦痛ではなく、楽しみになるような対応が必要です。多くのストレスを抱えている患者さんを癒していければ生殖機能は高まると考えます。

12月か1月に、第3回オンライン不妊症セミナーを開催したいと思いますが、その時にまたこれらの患者さんへの対応を復習してお話ししようと思っています。

不妊鍼灸・患者さんへの対応・流産編(2)

鍼灸師の教育課程では、『死』についての学習がないか、あってもごくわずかと思います。

流産は不妊で治療されていた方にとっては、自身の死、家族の死にも値するのではないかと感じます。

体外受精では、凍結胚を移植するとき『子供を迎えに行く』と思われる方もいらっしゃいます。凍結した胚の写真を見てわが子のように『可愛い』と声に出すかたもおられます。私には全く不思議ではなく、当たり前に思います。

流産、死をどう受け入れるか。

以前に不妊鍼灸ネットワーク時代に、不妊症専門看護師の菅野先生(ファテリティクリニック東京・看護師長)の講義を受けたことがありました。

その時のテーマがキューブラー・ロスの著書の抜粋からの、流産について、でした。

死=流産を受け入れるまでの心理状態のプロセスをまとめたものが、『死の瞬間』に書かれています。

流産してしまって、それですべての治療を終了する方もおられます。一方、新たに治療に踏み出す方もおられます。どちらが正しいということはありません。

術者としては、患者さんがから治療復帰の連絡を待つことしかできません。

 

不妊鍼灸・患者さんへの対応・流産編

9月の診療案内
https://sanpei89in.com/blog/?p=4594

9月8日(日)は午前中診療します。
9月22日(日)、23日(祝)は休診となります。
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8月25日に東京の八丁堀・日本鍼灸福祉専門学校で開催された、カナケン・セミナーでお話しした内容をもうちょっと書きます。

ちょうど今日は、学会で発表できるような自然妊娠の方がいらっしゃいました。無排卵・無月経で長期の治療になりましたが、鍼灸を行いながら専門医を紹介し、転院してカウフマン療法を行い、人工授精(4回目)周期に自然妊娠した方でした。

お年も40歳が近づいてきた年齢。郡山から頑張って鍼灸に通った甲斐がありました。

無月経は第1度、第2度とありますが、鍼灸だけで再度月経が来るのはなかなか難しいです。

この患者さんも専門医によるしてホルモン療法を行いました。その後は鍼灸の効果だったか、持続的に順調に自然排卵が続くようになりました。

妊娠され、順調に続くことを願うばかりですが、鍼灸は妊娠継続に良い効果があります。もうちょっと鍼灸は続けます。

さてカナケンセミナーでの話。

せっかく妊娠しても、流産されることが良くあります。

特に、不妊症だった方が自然妊娠した場合、流産される方は特に多いと感じます。それは、妊娠出来なかった原因にホルモンがあり、鍼灸でホルモンが改善して妊娠したとしても、出産できるまでの回復までにもう一歩!という時期だったかもしれません

初期の流産の7割は偶発的な染色体の異常が原因と言われています。つまり流産の7割は受精の時に運命が決まる、ということだそうです。

しかし、残り3割に黄体機能不全などホルモンに原因があります。だから改善途中の妊娠だから流産が多いのかもしれません。

流産は大変つらいですが、当院では鍼灸治療を開始する前に『鍼灸を開始して1回目や2回目の妊娠は、流産することが多い』と説明します。これは流産した際にはとても言えないからです。

流産はとても辛いことですが、妊娠しなければ流産もしません。多くの鍼灸院には一人目の子供が授からない(原発性不妊)の方は多いと思います。

そのほとんどの方は、化学妊娠(胎嚢確認まで至らない妊娠反応のみ)すらない方ばかりなのです。

妊娠できた現実は事実として受け入れ、妊娠を喜ぶのではなく『夫婦ともども妊娠でっきる体であった』事を喜んで、安心していただきたいと思います。

流産はとてもつらいものですが、妊娠できたからこそあり得る不幸です。次の妊娠に向けて治療の時期を逃さないでほしいと思います。

流産して失意の底におられる方がもし読まれておりましたら、まずは一言お見舞い申し上げます。治療者側の一意見として、まずはご容赦下さい。