「治療日記」カテゴリーアーカイブ

不妊鍼灸・患者さんへの対応 いろいろな思いの患者さん

9月の診療案内
https://sanpei89in.com/blog/?p=4594

9月8日(日)は午前中診療します。
9月22日(日)、23日(祝)は休診となります。
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カナケンセミナーや、わが福島県鍼灸師会でのオンライン不妊症セミナーで話した内容をもうちょっと書いていきます。

不妊治療を受けに患者さんが来られるわけですが、みなさん当たり前ですが妊娠出産を希望しておられます。

しかしごく一部ですが、すっかり妊娠をあきらめていらっしゃるかたもおられます。さまざまな治療を行ったけど、妊娠できなかった、という方もいらっしゃるし、そもそも夫が非協力的で、専門医の治療に進めない、という方もこれまでいました。

中には体外受精まで行ったけど妊娠できなくて、姑さんに『うちの息子はどこも悪くないんだけど妊娠できないから』と言って、お嫁さんを連れて来たこともありました。

諦めたけど、鍼灸だけでも続けていれば、周囲への『私はまだ頑張っているんです』という言い訳にになる、と考えたのででしょうか。真面目に通われる方もおられます。

ところが、そうした患者さんを治療していると、体調がよくなり妊娠できるかもしれないと前向きになり、また専門医での治療を目指す方がおられます。

またそうした中に自然妊娠される方が、少なからずおられます。

当院の不妊治療の特徴は、人工授精を行っている方、体外受精を行っている方でも自然妊娠される方がおられることです。

鍼灸を受けに行くことが苦痛ではなく、楽しみになるような対応が必要です。多くのストレスを抱えている患者さんを癒していければ生殖機能は高まると考えます。

12月か1月に、第3回オンライン不妊症セミナーを開催したいと思いますが、その時にまたこれらの患者さんへの対応を復習してお話ししようと思っています。

不妊鍼灸・患者さんへの対応・流産編(2)

鍼灸師の教育課程では、『死』についての学習がないか、あってもごくわずかと思います。

流産は不妊で治療されていた方にとっては、自身の死、家族の死にも値するのではないかと感じます。

体外受精では、凍結胚を移植するとき『子供を迎えに行く』と思われる方もいらっしゃいます。凍結した胚の写真を見てわが子のように『可愛い』と声に出すかたもおられます。私には全く不思議ではなく、当たり前に思います。

流産、死をどう受け入れるか。

以前に不妊鍼灸ネットワーク時代に、不妊症専門看護師の菅野先生(ファテリティクリニック東京・看護師長)の講義を受けたことがありました。

その時のテーマがキューブラー・ロスの著書の抜粋からの、流産について、でした。

死=流産を受け入れるまでの心理状態のプロセスをまとめたものが、『死の瞬間』に書かれています。

流産してしまって、それですべての治療を終了する方もおられます。一方、新たに治療に踏み出す方もおられます。どちらが正しいということはありません。

術者としては、患者さんがから治療復帰の連絡を待つことしかできません。

 

不妊鍼灸・患者さんへの対応・流産編

9月の診療案内
https://sanpei89in.com/blog/?p=4594

9月8日(日)は午前中診療します。
9月22日(日)、23日(祝)は休診となります。
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8月25日に東京の八丁堀・日本鍼灸福祉専門学校で開催された、カナケン・セミナーでお話しした内容をもうちょっと書きます。

ちょうど今日は、学会で発表できるような自然妊娠の方がいらっしゃいました。無排卵・無月経で長期の治療になりましたが、鍼灸を行いながら専門医を紹介し、転院してカウフマン療法を行い、人工授精(4回目)周期に自然妊娠した方でした。

お年も40歳が近づいてきた年齢。郡山から頑張って鍼灸に通った甲斐がありました。

無月経は第1度、第2度とありますが、鍼灸だけで再度月経が来るのはなかなか難しいです。

この患者さんも専門医によるしてホルモン療法を行いました。その後は鍼灸の効果だったか、持続的に順調に自然排卵が続くようになりました。

妊娠され、順調に続くことを願うばかりですが、鍼灸は妊娠継続に良い効果があります。もうちょっと鍼灸は続けます。

さてカナケンセミナーでの話。

せっかく妊娠しても、流産されることが良くあります。

特に、不妊症だった方が自然妊娠した場合、流産される方は特に多いと感じます。それは、妊娠出来なかった原因にホルモンがあり、鍼灸でホルモンが改善して妊娠したとしても、出産できるまでの回復までにもう一歩!という時期だったかもしれません

初期の流産の7割は偶発的な染色体の異常が原因と言われています。つまり流産の7割は受精の時に運命が決まる、ということだそうです。

しかし、残り3割に黄体機能不全などホルモンに原因があります。だから改善途中の妊娠だから流産が多いのかもしれません。

流産は大変つらいですが、当院では鍼灸治療を開始する前に『鍼灸を開始して1回目や2回目の妊娠は、流産することが多い』と説明します。これは流産した際にはとても言えないからです。

流産はとても辛いことですが、妊娠しなければ流産もしません。多くの鍼灸院には一人目の子供が授からない(原発性不妊)の方は多いと思います。

そのほとんどの方は、化学妊娠(胎嚢確認まで至らない妊娠反応のみ)すらない方ばかりなのです。

妊娠できた現実は事実として受け入れ、妊娠を喜ぶのではなく『夫婦ともども妊娠でっきる体であった』事を喜んで、安心していただきたいと思います。

流産はとてもつらいものですが、妊娠できたからこそあり得る不幸です。次の妊娠に向けて治療の時期を逃さないでほしいと思います。

流産して失意の底におられる方がもし読まれておりましたら、まずは一言お見舞い申し上げます。治療者側の一意見として、まずはご容赦下さい。

不妊と妊娠後の鍼灸

お盆明け。

昨日は送り盆。我が家のご先祖様は無事に帰られたでしょうか。

盆中は2日間しか休まなかったので、夏休みとか盆休みとか、そういう感じはなく、ただただ暑い毎日でした。

あと40分で店仕舞いですが、ちょっと診療日記を書いてみます。

本日は、20代に卵巣チョコレート嚢腫の手術歴があり、月経周期25日ということで、高FSH・低AMHが疑われたために早めにARTを受けられるよう、隣県の某大学附属病院リプロダクションセンターを紹介させていただいたいただいた方の来院。

リプロダクションセンター紹介後、自然妊娠し、しかし化学流産。鍼灸続行しまた妊娠し、現在は妊娠18週になりました。

ご出産は郡山の高級ホテル並みということで大人気の●▽バースクリニックということでした。ここ凄い人気で、当院卒業の方も何人か今年出産されるようです。

続き、和樹先生の患者さんでPCOSの方。某医大生殖医療センターまで紹介させていただきましたが、積極的な治療を始める前に自然妊娠されたようで、この方ももう妊娠20週くらい。

その前に、排卵障害・PCOS気味で専門医でクロミッド → hMG → レトロゾール(フェマーラ)と続け、卵が出来なくなってきた方のご来院。

この方も辛抱強く鍼灸を続けていたら卵が育つようになり、レトロゾールを使って排卵誘発し、何回目?かの人工授精で妊娠でした。

しかし基礎体温を見たり、経過を見るとどうも人工授精ではなくその数日後のタイミングで妊娠した可能性が濃厚な。

この方も妊娠33週になり今回は逆子でご来院です。
ご主人ともども根気よく鍼灸を続けての快挙でした。

本日最後から二人目の患者さんは、40歳をちょっと越えたARTを受けていた患者さんでした。

仕事も忙しく、十分な頻度の治療はできなかったのですが、6月の採卵で凍結できた卵が良かったのでしょう。

今月の早期胚移植でめでたく妊娠陽性となりました。

鍼灸で卵の質が改善したとか、子宮の内膜が厚くなったとか、鍼灸の効果はありますが、妊娠や出産を目指すことが目的で、卵や子宮が目的ではありません。

例えば早期の流産の原因の大部分は受精時の偶発的な染色体異常ということになっていますが、実はその割合は7割で、残り3割にホルモンの異常などがあります。

もし鍼灸で卵の質や子宮の厚さが改善するのならば、それはホルモンや自律神経を含めた体全体を改善するからです。

妊娠した後も鍼灸を続けると、必ず妊娠した体には良い効果があるはずです。

本日は40代の妊娠例が出ましたが、高齢妊娠につきものの早産は、当院で鍼灸を行っている方ではほとんどなく正期産になる方ばかりです。

うれしかったこと 2024年7月3日

今日は蒸し暑く、朝からエアコンを入れてました。

いよいよ梅雨に入ってしまったのでしょう。

午前中のんびり診療を行い、午後の1人目の、中華料理屋さんの

ご主人を治療している最中、

『無沙汰してます』と、小柄な女性が入ってきました。

もう何年も前。何度も何度も体外受精を行ってもなかなか妊娠できなくて鍼灸に通っていた方でした。

隣県の大学病院に通い、何度も採卵を行っていましたが、妊娠できないばかりか卵も採れなくなって、困っていた方でした。

鍼灸は真面目に通い、また採卵で卵が採れなかった。もうダメなのか、と気落ちする姿に慰める言葉もなく、できる限りの治療を行っていました。

今であれば、有効な鍼灸治療の技術もいくつかありますし、採卵の成績が飛躍的に良くなるレーザー治療も行っていますが、その当時は今ほど当院の治療も誇れるものがなかったのでした。

高単位のhMG注射の注射でダメ、クロミッドでの低刺激もダメ。当時、使い始める施設が出始めたフェマーラを使い、なんどか採卵し、やっと胚移植まで漕ぎつけました。

無事胚移植後、患者さんの来院がすっかり途絶えました。

当然、結果はダメで、やっと採卵できて移植ができて、もうあきらめたのだろうと思っていました。

ところが、その時に妊娠して無事出産し、その子が5歳になったそうでした。どうしても鍼灸に通っていたことが忘れられず、今日はお礼に来てくださったのだそうでした。

私はすぐ人の名を忘れるのですが、その方の名はずっと気になっていて忘れていませんでした。

知子さん、今日はお子さんの写真を見せていただき、ありがとうございました。このことを励みにして、これからもいろいろな治療法を研究していきます。

胚移植後~妊娠初期の出血について

7月の休日診療案内

<休診>
7月7日(日) 全日本鍼灸学会盛岡講座のため
7月21日(日) 福島県鍼灸師会夏季学術講習会のため

<日曜・休日診療>
7月14日(日) 午前8時~正午まで
7月15日(月・祝) 午前8時~正午まで
7月28日(日) 午前8時~11時まで

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着床後に子宮から出血を訴える方が割合多くいます、

特に、体外受精の胚移植後の妊娠者に多い印象がありますが、一番心配なのは進行流産で、出血量が多くなったり先決であったりする場合は要注意です。

現在当院で無事妊娠し、妊娠20週越えの安全圏まで行く途中に、出血を訴えていた方は3人いました。

うち1名は妊娠8週で、もう1名は自然妊娠で11週。1名は12週。3人とも着床後から出血を訴えていました。

子宮の内膜に胎盤になる絨毛組織が根を張ると、小さな血管を壊して広がることがあり、それが血腫になって出血を起こすことがあります。

ほとんどは心配ないもので、やがて吸収されるようになります。

ただし中にはおおきな血腫となって胎盤をはがすこともありますから、血腫が見つかったり、出血がある時はあまり体を動かさないほうが良いです。

当院では、妊娠前から使っていた三陰交などのツボのお灸を勧めています。三陰交に灸を行うことによって、血腫が吸収されやすくなる印象があります。

うれしかったこと

昨日はとても嬉しい事がありました。

カルテを見ると、4年以上も通われている方。

個人情報を伏せても、あまり書けないほど様々な事がありました。

大学病院のご紹介。不成功を数え様々な治療を乗り越えてのやっとの妊娠。

ご出産の日を楽しみにしていての、突然の不幸。

治療に復帰しても、なかなか妊娠せず。

さすがに初診から4年経ち、年齢的に厳しくなって来たところ。

今度はしっかり妊娠して、昨日は胎児心拍も確認できました。

初診時から4年経っていても、卵巣の機能があまり衰えておらす。やはり鍼灸は効果があったなでしょう。

帰ってきた赤ちゃん。しっかり育ちますように。

子宮内膜症既往の不妊の方

チョコレート嚢腫手術の既往のある患者さん

昨年の8月から不妊で来院している方。

20代の半ばに卵巣のチョコレート嚢腫で片側の卵巣を内視鏡で部分手術し、30代初めとなった今は月経の周期が25日くらい。

卵巣機能低下による高FSH状態による頻発月経状態(一ヶ月に2回月経)と低AMHで閉経が早くなる早発閉経予備軍と判断し、鍼灸治療開始後、3ヶ月で国際医療福祉大学を紹介させていただきました。

当院での卵巣機能改善、卵子の質の改善を目指した治療をしながら、紹介先でのリプロダクションセンターでの諸検査中に自然妊娠。

喜んだのもつかの間、胎嚢確認できずに化学流産へ。

再度自然妊娠

その翌周期からはリプロダクションセンターでも積極的な治療を開始したらしく、プロミッドを使ったタイミング指導から始まり、2周期目で再度妊娠。

前回、化学流産した周期から1周期置いた周期です。

数年妊娠しなかったのが、3か月に2回妊娠ですので、やはり鍼灸は妊娠する体質へ体を変えるのでしょう。

定期的な治療継続が効果をもたらす

この患者さんは、時々2週に1回になる時がありましたが、週に一回真面目に通われていました。

体質改善のためには、継続した治療が必要です。

前回の治療の効果が残っているうちに、次の治療を重ねると、効果も重なっていきます。

せっかく治療を始めたのならぜひ真面目に継続しましょう。