「講演活動」カテゴリーアーカイブ

日本伝統医療看護連携学会で話したこと・シンポジウム

11月27日に仙台の仙台赤門短期大学で開催された第4回日本伝統医療看護連携学会では、多職種連携をテーマにしたシンポジウムにもシンポジストとして登壇させていただきました。

私に与えられた演題は、『会津医療センターとの交流について』でした。

私が会長を務める福島県鍼灸師会では、会津医療センター漢方医学講座教授の三潴忠道先生に顧問を毎年お願いしています。

そのため夏の研修では、毎回会津医療センターの講義室を使わせていただき、講師の先生もお願いしています。

三潴先生とは、東日本大震災翌年からのお付き合いとなります。

県立会津病院、県立喜多方病院を統合して新たに設置する福島第会津医療センターの準備室長に三潴先生が赴任されました。

その時に、全日本鍼灸学会東北支部長の武藤永治先生のご紹介で当時の安齋昌弘会長、中沢良平副会長でご挨拶に伺ったのが始まりです。ご縁に感謝しています。

上の写真は、三潴忠道先生が学会頭になり準備の3年間を含めて陣頭指揮を執って開催した第64回全日本鍼灸学会ふくしま大会でした。三潴先生は中央に、その隣は実行委員長の中沢良平先生。私はどこにいるかわかりますでしょうか(笑)

会津医療センターは福島医大の附属病院でもあり、医師免許を取得した研修医の初期・後期研修も行っています。

その研修に、鍼灸師免許を取得した鍼灸師も福島県の準職員として研修医と全く同じ研修を行うシステムがあります。

1年目は産婦人科を除く全科を4週ごとに研修していく、いわゆるスーパーローテーションで研修します。

全国ではここだけ、のシステムですが、私たち開業鍼灸師でも、このような研修に触れることは大切です。

夏の講習会では会津医療センターを会場にして、研修医の指導医でもある宗像源之先生(病院教授・総合内科)から総合内科領域を、鈴木雅雄先生(附属研究所教授・漢方外科)からは鍼灸のエビデンスを中心に講義をお願いしています。

こうした研修のほか、主に災害時にボランティアとして活動したスライドを提示しました。

災害時の鍼灸ボランティア活動は、1995年の阪神淡路大震災の際の兵庫県鍼灸師会のチーム活動が嚆矢です。

わが福島県鍼灸師会としては、2004年に発生した新潟中越地震への鍼灸ボランティアを行いました。これは広域災害への鍼灸ボランティアとして国内2例目となります。

新潟・小千谷高校体育館では医療班として布陣していた信州大学のドクターたちに、『鍼灸って、水道も電気がなくて、治療器具もこんなに少なくていろんな症状に対応できるんですね』と感心されました。

こんなところからも、鍼灸を知っていただき。嬉しかったです。

2011年には東日本大震災に伴う原発事故による避難者に対して、3ケ月の長期にわたりビッグパレットふくしまでのボランティア活動を紹介しました。

発災直後の3月17日から、災害住宅が完成して入居がほぼ終わった6月までの活動で、大変喜ばれました。

この時の活動を評価されて、厚生労働大臣から感謝状をいただきました。当院の待合室に飾ってあります。

続いて令和元年(2019年)台風19号のボランティア活動を紹介しました。

福島県鍼灸あんまマッサージ指圧師会様と共同で、郡山市・いわき市・本宮町で活動しました。

不便でプライバシーがなく、窮屈な避難所生活は、避難者の健康を損ないます。

日中は水害に遭った家の片づけ、疲労困憊で避難所に帰ってきたころに鍼灸治療を受けてすっきり寝られるように、またおいしく食べられるように、ADLを改善していく効果が鍼灸にはあります。

こうしたボランティア活動は、会津医療センターでの学術研修と合わせて、鍼灸師自らの能力を高めるほか、一般市民や医師看護師などの医療系多職種の方々に鍼灸を知っていただく、ことを目的にしています。

災害はないことが良いことです。またいつも起こるわけではありません。

ですから平時から、例えば災害時を想定しスポーツボランティア会場などで治療技術や連携などをトレーニングしていることもお話しさせていただきました。

また学会や研修を毎年開催し、会員のレベルアップを図っています。

このような内容を持ち時間20分でお話ししました。

シンポジストと座長の皆様。

左から
座長 川嶋睦子先生(赤門鍼灸柔整専門学校)、大沼由香先生(岩手保健医療大学 教授)、三瓶、平栗達也先生(福島県鍼灸あんまマッサージ指圧師会会長)、遠藤美紀先生(くりはら介護塾代表)

日本伝統医療看護連携学会で話したこと・ミニセミナー

11月27日に仙台の第4回日本伝統医療看護連携学会のミニセミナーでお話しした内容について書きます。

ミニセミナーの持ち時間は1時間。

いつも全国の鍼灸師会さん(南は九州佐賀県、北は青森県)で講演を頼まれる時は実技を入れて3時間でお話ししています。

妊孕性を高める脳・報酬系の賦活作用の鍼灸、子宮内膜症など不妊体質の改善、多嚢胞性卵巣などの排卵障害、高齢不妊への対応など、また男性不妊全般の内容にすると、3時間×2回くらいのボリュームになります。

今回は1時間。しかも看護師さんなどの職種の方が多く、自分でできるセルフケアも紹介してほしい、となりました。

というわけで、内容は自然に子宮内膜症関連に。

まずは女性不妊篇

ヨーロッパ生殖学会の会長も務めた、ハンス・エバース博士の研究で、不妊患者における子宮内膜症の罹患頻度を挙げたものです。

不妊症=日本式でも1年の不妊期間の女性は、70%近くが子宮内膜症の罹患の確率があるとか。年々増加しているように見えますが、これは画像診断が進んだため発見が多くなったということだそうです。

サントリー医学研究所と京都大学の共同研究のスライドを示しました。

子宮内膜症の主訴は強い月経痛です。このせいで医療機関を受診するのは2割に満たないそうで、大部分は痛み止めなどの市販薬を常用してしのいでいるそうです。

この『痛み止めの常用』が、不妊の原因になる話。

卵子めがけて精子が泳ぐ『道しるべ』に、子宮収収縮を促し痛みの原因になる発痛物質であるプロスタグランジンのひとつが役に立っています。一方、痛み止めの薬の大半はこのプロスタグランジンの産生を抑制します。

つまりプロスタグランジンのブロックは、不妊の原因になるということです。

セルフメディケーションが悪い方向に進む、ということですね。

鍼灸や、自宅灸でセルフケアすると月経痛は改善しやすく痛み止めを使わないことで妊孕性を高めることにつながると思います。

看護師さんなど医療職の方々が多く聴講されていましたので、子宮内膜症の方の腹水が妊娠に及ぼす影響の研究をお示ししました。

数々の炎症性サイトカインが子宮内膜症を持った方の腹水中に存在し、妊孕能を下げ妊娠を妨げます。

またこうした腹水中の炎症性サイトカインを産生するのは、日本でも子宮内膜症のグレード分類に使われるアメリカ生殖医学会の分類の1~2期の軽症ほど多い、ということです。

軽症の子宮内膜症でも、妊孕能に大きく影響する、ということです。

実技では、看護師で鍼灸学校在学の学生さんにモデルをお願いし、ツボ2つを使った自宅灸のデモンストレーションを行いました。

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続いて男性不妊篇。

すでに子供がいるカップルの団男性の精液所見は、WHOの基準をはるかに超えた1ml中で8200万。

しかし同じ研究者(岩本教授・現国際医療福祉大)の未婚男性の平均は5000万くらいで、4人に1人は4000万以下だったそうです。

精液所見が落ちると自然妊娠するまでの期間が長くかかるという報告があります。

男性不妊に対する治療は、例えば高度な精索静脈瘤があれば手術適応となりますが、実際は男性不妊の治療では決定的なものは少なく、補中益気湯などの漢方薬や亜鉛などのサプリメントによるものがほとんどです。

そこで当院で行っている鍼灸治療による精液所見の改善をお示ししました。

動画でも2例ほど紹介しました。

そのうちの1例を。

日本伝統医療看護連携学会で講師を務めてきました

本日11月27日は、仙台赤門短期大学を会場にした第4回日本伝統医療看護連携学会にて、医療系他職種連携をテーマにしたシンポジウムと、鍼灸実技で当院の不妊鍼灸治療を披露して来ました。

仙台赤門短期大学は看護師を養成する看護学部があります。

看護師、柔道整復師、鍼灸師、またそれらの学生に、当院の不妊鍼灸治療を披露し、自分でツボに灸や指圧によるケアについてお話しさせて頂きました。

日曜日は私塾・開業塾を開催しました

昨日は日曜日。

7月2回目の日曜診療を半日湯やり、午後からは当院主催の勉強会、3回目になる『開業塾』を開催しました。

テーマは子宮内膜症で、不妊に関するほか、続発性月経痛、月経困難症についてでした。

講義をzoomを使いリモートにして、いろいろなところから参加して頂きました。

また当院の会場参加者には、ツボの取り方の実習を行いました。

みなさん勉強熱心ですね。次回は10月頃、男性不妊をテーマにして開催します。

ミニ勉強会

先日の香川県鍼灸師会のリモート登壇の際、なんらかのトラブル対策として、師会の先生3人と鍼灸学校の学生さん2人をお手伝いとして待機して貰ってました。

実技のビデオファイルがネット越しにうまく再生出来なかった際に、リアル配信出来るようにしていた訳でした。

結局は杞憂に終わりました(^◇^;)

講習会後は

郡山の、はりきゅう接骨快生堂の鈴木暢弘先生からは、パーキンソン病などでよく使うツボを教えて頂きました。

あとパニック障害などでよく使う、耳ツボの裏神門を。

モデルは,那須塩原・西那須野で赤田山はり・きゅう・マッサージ接骨院の高橋加洋子先生。

ミニ勉強会を終えて解散後は家内と夕食を食べに行きました。

麻婆豆腐と生ビール。一仕事したあとのビールは格別ですね。

今月はまだまだ勉強会が続きます。

24日は鍼灸師会の講習会、31日午後は当院の開業塾です。

 

不妊治療 病院と鍼灸院の治療の違い

だいぶ先と思っていた香川県鍼灸師会様の講習会も今週末となりました。

時間があればスライドの読み直しをしていますが、さて3時間で完了できるか??

いつもセミナーで話す場合に強調するのは、不妊治療での、専門医での治療と当院など鍼灸院の治療の大きな違いです。

名の通った有名なクリニックでも、患者さんの体質を治療することはありません。たいていは周期ごとに完結する治療となります。

血液検査によるホルモンチェック→排卵誘発・卵を育てます→卵が育ってきたら、排卵させる・採卵する→受精させる→着床したか?

だいたいはこの流れになります。加齢による卵巣機能改善では数周期にわたってDHEA-Sなどのサプリメントを使ったりして卵巣機能の改善を目指す治療もあるにはありますが、一般的ではありません。

鍼灸治療の場合は、直接卵を育てる治療もありませんし、育った卵をきっちり36時間後に排卵させるような治療もありません。
もしかしたらそれができる達人がいるのかもしれませんが。

鍼灸治療は数周期にわたっての体質改善であり、これによってのホルモン環境の改善、子宮・卵巣の血流の改善を目指していきます。

例えば、鍼灸治療のみを行って体質改善を行っている間に自然妊娠できなくとも、その後の専門医の治療を行うと、それまでクロミッド1錠で卵が育たず、2錠→注射など行っていた方でも、クロミッド1錠でよい卵が育ったりするようになります。

また体外受精を行っていて、採卵できる数が少なかったりグレー度の低い卵子にしか育たなかったものが、良いグレードの胚に育つことがあります。

こうした体質改善は、実は大切なのだと思います。

当院では最低の治療頻度で1週に1回を行います。

これが2週に1回くらいだと、あまり改善効果がないようです。

原因不明不妊を考える 香川県鍼灸師会講演スライドから

7月の日曜診療は、3日、10日、31日の午前中のみとなります。
日曜日は術者が1名のため新患の対応はできません。

 

香川県鍼灸師会での講演のスライドです。

原因不明(女性)不妊に卵管のピックアップ障害が原因として推定されています。

ピックアップ障害とは、排卵寸前の卵胞を卵管が探り当て、排卵した卵子を卵管の先端にある卵管采(らんかんさい)と呼ばれる部分でキャッチして卵管内に吸い込む働きを言います。

この機能が悪いために、射精され子宮内から卵管先端で待っていいる精子に、排卵した卵子が出会えなくて妊娠できないのです。

子宮内膜症の腹腔内には、子宮内膜症のために以上に免疫の活性化した腹水があります。

その腹水中には様々なサイトカインが産生され、例えば卵管のピックアップを阻害したり、未破裂黄体化卵胞(LUF: lutenized unruptured follicle)を起こさせたりします。

LUFは一種の遺残卵胞の一つで、多くの方が経験するものです。

たとえば子宮内膜症が進行したものに子宮内膜症性嚢胞(いわゆるチョコレート嚢胞)というものがあります。これは子宮内膜症の分類ではよく使われるr-ASRM分類:(修正米国不妊学会分類)の3~4期の進行したものになり、当然に不妊の原因になりうるわけですが、、、、

自然妊娠や人工授精の妊娠率をを阻害する卵管のピックアップ障害を引き起こすのは、r-SARM分類でも1~2期の軽い病期のものが多いそうです。

子宮内膜症の一種の広範な炎症状態でサイトカインが増えますから、たとえば、鍼灸のように月経痛が改善する治療はこうしたサイトカイン暴走の状態を改善するのではないかと考えます。

月経痛が改善したら、自然に赤ちゃんを授かった。
当院ではよくある話ですが、こうした要因があるのかもしれません。

 

原因不明(女性)不妊を考える

7月10日(日)は、午前中は日曜診療があります。

少し早めに切り上げて、午後からはリモート登壇で香川県鍼灸師会様の講習会の講師を務めます。

やっと、講義に使うスライドを作り上げました。

作ったスライドは90枚。
これも話さないとダメでしょ、これもこれも。。。
90枚になったわけですが。

枚数を少なくするのは、至難の業です。

今回は3時間の講義時間で、スライドでお話しするのは2時間。
残り1時間はビデオ撮りしておいたファイルを使っての実技披露です。

久しぶりにスライドを作りましたが、新しい気づきもたくさんありました。

やはりというか、原因不明不妊について思うのは、軽度の子宮内膜症が遠因になっているのではないか。

そう思います。

下のスライドは講義に使うものですが、ハンズ・エバーズというヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)の会長も務めた学者さんの研究で、女性不妊患者にこれだけの子宮内膜症罹患の頻度があります、というデータです。

 

あと山王病院院長を務めた、東京大学産婦人科元教授の、堤治先生のデータ(生殖医療のすべて 丸善 P122)

初潮から20年といえば30代も半ばで、不妊で鍼灸院に良く来院する年代ですが、出産回数が0回だと75%近くが子宮内膜症になるだろうというものです。

もっとも子宮内膜症の患者さんを調べたデータで、すべての女性がそうなるわけではありません。

子宮内膜症は鍼灸で根治できるものではありませんが、その痛みなどの苦痛に対する対応は不妊治療に通じるものがあります。