平成28年の3月、今のJISRAM(一般社団法人 日本生殖鍼灸標準化機関)の前身の不妊鍼灸ネットワークの公開講座で講義を行った記事を見つけたので再度掲載したいと思います。
鍼灸の流派はたくさんあり、さまざまな治療法が存在します。
効果的な治療は学会などで報告され、だんだんと流派を越えてスタンダードになり、標準治療として広く国内で行われていきます。
鍼と鍼を電極でつなぎ、微弱な電気を流す電気鍼などはこの最たるものです。
不妊治療にはそれがなく、全国で行われているものも共通点がなく、当時、標準治療になりうるのは名古屋の明生鍼灸院の中リョウ穴刺鍼法や、陰部神経刺鍼と通電法でした。
この手法を明生鍼灸院の鈴木裕明院長、木津正義副院長が全日本鍼灸学会で発表し、再現性の高い治療法であると全国で用いられています。当院でも基本治療として行っています。
この手法を共通手技にして、全国レベルで質の高い不妊鍼灸治療を追究して共有しようと、京都のなかむら第二針療所の中村一徳院長、東京のアキュラ鍼灸院の徐大兼院長と三瓶で、不妊鍼灸ネットワークを作りました。今もこの二人は私の無二の親友です。
仲間だけで技術や知識を独占せず、年に1回は下記の写真のような公開講座を行い、全国の先生方に披露しました。
その公開講座の第2回目で三瓶が講師に登壇させていただいた時のもので、業界の新聞に掲載された記事です。当時の私は不妊鍼灸ネットワークも福島県鍼灸師会も副会長でした。
排卵誘発 → 卵胞発育確認 → タイミングや採卵
こうした周期ごとに現代医学的な治療は『1単位』として完結します。単位とは言わず、周期と言いますが。
鍼灸治療は体質の改善です。
1回ごとの治療を繰り返し、次の治療の時は、前回よりも改善した状態から今回の治療の効果を重ねて、というように、1回ごとの治療の効果を重ねていきます。
これには、数か月から1年と時間がかかる場合があります。
その代わり、薬を使わない治療ですから、薬に慣れて例えば卵胞が育たなくなるとか、そういう心配はありません。また月経の際の体調悪化(PMSや月経痛)などが改善し、肩こりや腰痛、冷え症などが改善することもあります。
例えば排卵障害という状態があります。脳下垂体性ならストレスなどが原因となります。そうならば肩こりや首こりの治療も行うと効果的です。
卵巣性の排卵障害であれば、多嚢胞性卵巣(PCOS)などが割合多いです。これは西洋医学的にはクロミッドなどによる排卵誘発が第一ですが、繰り返していくとだんだん薬が増やさないと卵巣が反応しなかったり、薬では効果が出なくなったため注射で排卵誘発を行ったら、卵が出来すぎて多胎妊娠を防ぐために、その周期は子作り禁止・治療は中止とか、があります。
こうした場合などは数周期体を休め、鍼灸治療で体調を整えるとまたクロミッドが効き出すことが良くありますし、それで妊娠される方も多いです。
日本人のPCOSは、糖代謝の異常体質(インスリン抵抗性)が絡む方が多いそうで、鍼灸治療は糖尿病の方も治療に来られるくらい、こうした体質に良い高効果があります。
自然妊娠されるかな、と思われた方で、1年2年となかなか妊娠せず、とうとう体外受精まで来てしまった方がおられました。ただこの方は良い卵も採卵で来たし、胚移植直前の現在は、子宮の内膜も十分厚く、よい結果が得られるのではないかと期待しています。
まじめに根気よく頑張ったので、神様も味方するのだと思います。