最近増えて来た過敏性腸症候群(IBS)

当院では30年前から潰瘍性大腸炎(UC)を研究テーマにして診療していました。

https://www.sanpei89in.com/study/uc.html

当時は潰瘍性大腸炎の発症率は10万人あたり3人〜5人と言われ稀な疾患でした。

鍼灸治療の報告は皆無であり、上記リンクの一例報告ながら当方の東北鍼灸学会での発表は大変注目されました。

鍼灸治療開始時の潰瘍性大腸炎の大腸カメラ像
白苔・黄苔の覆う、大腸表面。潰瘍性大腸炎の炎症像です。 福島赤十字病院(当時)・栗原陽一医師提供
鍼灸治療により、回復してきた大腸。大腸カメラ像
鍼灸治療により、改善してきた大腸。 福島赤十字病院(当時)・栗原陽一医師提供
数年にわたる鍼灸治療で緩解状態にある潰瘍性大腸炎の大腸カメラ像
鍼灸治療により緩解状態となった潰瘍性大腸炎の大腸カメラ像。 福島赤十字病院(当時)・栗原陽一医師提供

また当時は非常に珍しかった、鍼灸師と内科専門医の医療連携治療ということでも注目されました。当時お世話になった福島赤十字病院の栗原陽一医師には、今でも深く感謝しています。

さてタイトルの過敏性腸症候群ですが、上記で紹介した潰瘍性大腸炎と違う疾患ながら、なかなか厄介です。

過敏性というからには、多分に体質が関係します。また小学校~中学校あたりでの発症例は、起立性調節障害と同時に発症することもあり、不登校や無気力など、排便異常・腹痛などのほか実に多彩な症状を呈します。

当院では、これまで長年研究してきた潰瘍性大腸炎に対するさまざまな治療法を過敏性腸症候群に応用し、なかなか良い成績を挙げています。

腹痛の回数、排便の回数など、週に1回の治療を3ケ月程度行うとかなりの重症例でも改善します。

改善していけば、2週に1回程度の管理治療に移行しますが、これを1年程度続けると、病院から出されている薬が減薬や中止になったりし、やがて体質も改善して治ります。

一次的な冷えでお腹を壊しすぐ治るというものではなく、過敏性腸症状群は経過も大変長く、学童期と重なると不登校などにつながりやすく、お子様の一生にも影響します。

鍼灸は効果が高いですが、西洋医学的な治療と合わせ、体質改善まで見据えた長期的な治療が必要です。