胚移植とERAテスト

胚盤胞を移植する場合、子宮内膜に着床するのは排卵時刻を正確に特定したとしてその120時間後と言われています。

これは精子と卵子が出会って受精し、120時間後に着床寸前の胚盤胞に育つからです。

ヒトの子宮が胚盤胞を受け入れて着床できる時間は短く、わずが5時間足らずと言われています。

当院の患者さんで、良好な胚盤胞を何度も移植しても妊娠出来ない、と言う方がいました。

ある病院で、Gardener分類でグレード5を3回くらい移植し、病院を変えて、その病院では独自のグレード付け付けでしたが、これを移植すれば妊娠率が50%はあると言う最高ランクの胚盤胞をやはり3回移植して妊娠せず。

その病院とは、新宿の加藤レディースクリニックでした。

ERAテストという、着床の時期を調べる検査を行うと着床の時期は12時間ずれて遅かったとの事でした。

加藤レディースクリニックでは、AからFまで、胚の大きさ、胚盤胞になるまでの時間、AHAの有無、患者の年齢など様々な条件から胚のグレードを付けています。

加藤レディースクリニックでのグレードAと言う胚はなかなか得られないのですが、たぶん長らく続けたレーザーと鍼灸も効果があったのでしょう。

適当に思い出して書くわけにもいかず、カルテを見ながら書くと、この方は当院来院前に採卵3回、胚移植7回(胚合計7個)を行っていた難治性不妊と言われる方です。

胚移植は4回以上は成功率が上昇せず、そこから4回以上の反復不成功例を難治性不妊と呼ぶそうです。以前は胚移植2回以上不成功を難治性不妊といったそうです。

転院先の加藤レディースクリニックでグレードA,B,Aと胚移植を続け妊娠せず、ERAテストを実施を行い、143時間プラスマイナス3時間の結果をもとに胚移植を実施し、見事に妊娠出産されました。

長らく通院しレーザーと鍼灸を行い、もうだめかと思った最後の胚で先週妊娠判定陽性を得た方は、胚盤胞を使い果たした後残った早期胚移植でした。

早期胚は胚盤胞のように『移植の窓=implantation window』は存在しないと言われており、着床の時期は広いようです。もしかしたらこの方もERAテストを実施すると、胚盤胞移植の場合の着床の時期がずれていたといわれたかもしれません。

もっとも、最近はERAテストについて欧米などでのRCT(ランダム化比較試験)で否定的な意見も見られるようになりました。