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11月に全日本鍼灸学会東北支部学術集会で講義する内容の2番目。
卵の質を改善する。採卵の成績を向上させることに鍼灸は効果があるか。
多分、卵質の改善、採卵成績の改善とは、体外受精を受けている方、何度も受けている方は最大のテーマではないかと思います。
生物学では、受精する前は卵。受精してから『卵子』と呼ぶようになります。
受精する前の『卵』は1個の細胞ですが、染色体が普通の細胞の半分。22+1個の染色体が入っています。
ここへ、22+1個の染色体をもった精子が受精して、母方22+1、父方22+1の染色体が合わさり、44+2=46の染色体をもった1個の細胞の受精卵が出来上がります。
そして卵割と言われる分割を繰り返してやがて子宮の内膜に着床します。その後も細胞を増やしてやがて胎児ができていきます。
卵の質とは何でしょうか。
卵割を繰り返すには、膨大なエネルギーが必要だと言われます。1つは分割を繰り返すための栄養です。
これは検証することはできませんが、鍼灸をある程度行うと胚盤胞の獲得率が向上したり、採卵数が増えたりすることがあり、それが偶然ではない確率であったりします。そこから鍼灸の効果が推定できます。
PubMedでは、下記がありました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25854012/
腎虚型不妊症患者における鍼灸治療による卵子の質の改善
- PMID: 25854012
- 2015年のPubMed収載
方法: 腎不全(腎虚)として区別され、体外受精・胚移植(IVF-ET)を受けた年齢35歳から42歳の66例が、ランダムに観察群と対照群(各33例)に割り付けられた。
ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬を用いた長期プロトコールのIVF-ET療法が2つのグループに採用された。観察グループにて。
体外受精サイクルの月経 5 日目に、三陰交 (SP 6) に EA を適用しました。Zigong (EX CA 1)、Zhongji (CV 3)、Guanyuan (CV 4)。
対照群では、同じ経穴に偽鍼治療を適用しました。
処置は採卵日まで2日に1回与えられ、針は毎回30分間保持された。
腎不全症候群のスコア、良質卵子率の変化、2 つのグループで高品質の胚発生率と臨床的妊娠率が観察されました。
採卵日の卵胞液中のインスリン様成長因子-i(IGF-1)とIGF-2、および血清βエンドルフィンβ-EP)のレベルと、卵母細胞の品質との相関関係を2つのグループ間で比較しました
結果:
1) 観察群では、治療前と比較して治療後の腎不全症候群(西洋医学的な腎不全ではなく、腎虚のこと)スコアが明らかに減少しました(P<0.05)。
観察群の治療後のスコアは対照群と比較して明らかに大幅に減少しました。 (P<0.05)。
2) 観察群の良質卵子率と良質胚率はいずれも対照群より高かった[81.3% (161/198) vs 57.6% (98/170)、59.8% (58/198) 97) vs 37.7% (26/69)、両方とも P<0.05]。
3) 対照群との比較。採卵日の卵胞液および血清β-EP中のIGF-1およびIGF-2のレベルはすべて観察群で明らかに増加した(すべてP<0.05)。
結論: EAは卵胞液および血清β-EP中のIGFの発現を効果的に改善し、高品質卵子率と高品質胚率を増加させ、腎不全(英訳のため本来は東洋医学の『腎虚』だと思われる)の症状を軽減します。
もう一つは、卵の染色体の質だと言われています。また精子にも不良生活や年齢による精子DNAの欠損が指摘されています。
染色体では鍼灸の出番はないと思われがちですが、この染色体の異常は『受精の際の偶然の異常』として出やすく、ここにも鍼灸は効果がありそうです。
不妊鍼灸ネットワーク、JISRAMを一緒に創設した仲間に、京都の中村一徳先生(なかむら第二針療所)がいます。
この先生の研究に、同じ卵巣刺激法を行っていた同一の患者さんで、鍼灸介入前後で採卵成績と胚盤胞獲得(到達)率を調べた世界的にも珍しい研究があります。
55人の患者さん。
鍼灸開始前 223採卵周期(回数) 採卵数838個
鍼灸治療後 180採卵周期(回数) 採卵数807個
40歳未満は、胚盤胞の獲得率が約3倍に。こんな研究があり、論文化して世界に発出していただきたいと思います。
ほか、このような研究もあります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19873910/
卵巣反応不良患者の体外受精・胚移植(IVF-ET)に対する電気鍼治療の効果
- PMID: 19873910
- 2009年
方法: IVF-ETを受け入れた60例を無作為に観察群と対照群に分け、各群30例とした。
2つのグループは両方とも排卵誘発のためのアンタゴニストスキームで治療され、観察グループには電気鍼治療介入も追加され、Guanyuan(CV 4)、Taixi(KI 3)、Sanyinjiao(SP 6)などが選択されました。治療後に 2 つのグループの治療効果を比較しました。
結果: 治療前には 2 つのグループ間に有意差はありませんでした。
観察群(鍼治療グループ)の腎不全(腎虚)の症状は治療後に大幅に改善され、血清エストラジオール(E2)値、受精率、卵子成熟率、良質胚率、着床率は観察群の方が群よりも優れていました。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)注射日の対照群(すべて P<0.05)。
観察群の卵胞液および血清中の幹細胞因子(SCF)のレベルは、対照群よりも有意に高かった(両方ともP<0.05)。
観察群の妊娠率は対照群よりも高く、観察群の中絶率は対照群よりも低かった。
結論: 電気鍼療法は、卵巣予備力が乏しい体外受精患者に対して良好な臨床効果があり、卵子の質と妊娠結果を改善することができます。
本日の結論。卵質の改善や採卵成績の向上に、鍼灸は効果があります。