咳止めのツボ 天突(てんとつ)の思い出

当院受付の壁にセイリンと言う鍼のメーカーさんからいただいたカレンダーがかけてあります。

毎月、季節ごとに多くなる症状に用いる代表的なツボの解説を毎月けいさいしていて、とても良いカレンダーです。

残り1枚となった最後の12月は、首の前、喉元にある天突と言うツボ。

喘息や咳などに良く使うツボですが、通常は鍼を打つ場所です。

震災前だからもう五年以上前になります。心臓にペースメーカーを入れていた80歳を超えたおばあちゃんの往診をしていた時のことです。

ある日、天突を指で指し、ここに灸をして欲しい、と言うのです。その日は乾いた咳が続き、天突の灸で治して欲しかったのでしょう。

良くツボを知っているな、と思う反面、普通は咳止めに鍼を打つ場所。『灸じゃなくて鍼を打つ場所なんだけど』と言うと、頑なに灸をして欲しいと言うのです。

理由を聞くと、私の父が存命して診療していた頃、良くこの場所に咳止めで灸をしていたそうです。

実際に使ってみると鍼よりも灸の方が良く効きます。ただし灸だから煙が多少出るので、術中は注意が必要です。

時折、先代の治療を受けていた患者さんの治療を行う時がありますが、当時の話を聞かせて頂くのは大変貴重な事です。