「不妊症・子宝治療」カテゴリーアーカイブ

原坊の朝顔の種 配布を始めました

今年も妊活・子宝の縁起ものである『原坊の朝顔の種』の配布を始めました。

サザンオールスターズの原由子さんのご懐妊にまつわる、正真正銘の本物の種となります。

当院には2011年の東日本大震災の年にこの種がやってきました。
https://sanpei89.rakusaba.jp/diary/diary.cgi?mode=view&no=119
当時のブログの記事です。

それから患者さんに里親になっていただいて種を増やしていただき、ご懐妊や出産したらその種を分けていただき、また患者さんにお分けして里親になっていただく、というシステムです。

育て方は、ネットなどで調べてみてください。

もし子宝に恵まれましたら、当院に収穫された種の半分をいただけましたら、来院する患者様に配布いたします。

残りの半分は、ご友人や知り合いに配布されるとか、お子様の成長を願ってまた育ててみてください。

当院に掲示させていただいている、お子様の写真などですが、下の2枚のパネルは昨年ご出産された方たちです。赤ちゃん連れでご挨拶にいらっしゃるのは、妊娠・ご出産された方の10人に1人くらいです。

ですので、実際にはこの10倍くらいの方が妊娠・出産されていることになります、

この方たちの想いの籠った種を差し上げますので、大切に育ててみてください。

不妊治療は1回1回の積み重ね効果にて

平成28年の3月、今のJISRAM(一般社団法人 日本生殖鍼灸標準化機関)の前身の不妊鍼灸ネットワークの公開講座で講義を行った記事を見つけたので再度掲載したいと思います。

鍼灸の流派はたくさんあり、さまざまな治療法が存在します。

効果的な治療は学会などで報告され、だんだんと流派を越えてスタンダードになり、標準治療として広く国内で行われていきます。

鍼と鍼を電極でつなぎ、微弱な電気を流す電気鍼などはこの最たるものです。

不妊治療にはそれがなく、全国で行われているものも共通点がなく、当時、標準治療になりうるのは名古屋の明生鍼灸院の中リョウ穴刺鍼法や、陰部神経刺鍼と通電法でした。

この手法を明生鍼灸院の鈴木裕明院長、木津正義副院長が全日本鍼灸学会で発表し、再現性の高い治療法であると全国で用いられています。当院でも基本治療として行っています。

この手法を共通手技にして、全国レベルで質の高い不妊鍼灸治療を追究して共有しようと、京都のなかむら第二針療所の中村一徳院長、東京のアキュラ鍼灸院の徐大兼院長と三瓶で、不妊鍼灸ネットワークを作りました。今もこの二人は私の無二の親友です。

仲間だけで技術や知識を独占せず、年に1回は下記の写真のような公開講座を行い、全国の先生方に披露しました。

その公開講座の第2回目で三瓶が講師に登壇させていただいた時のもので、業界の新聞に掲載された記事です。当時の私は不妊鍼灸ネットワークも福島県鍼灸師会も副会長でした。

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排卵誘発 → 卵胞発育確認 → タイミングや採卵

こうした周期ごとに現代医学的な治療は『1単位』として完結します。単位とは言わず、周期と言いますが。

鍼灸治療は体質の改善です。

1回ごとの治療を繰り返し、次の治療の時は、前回よりも改善した状態から今回の治療の効果を重ねて、というように、1回ごとの治療の効果を重ねていきます。

これには、数か月から1年と時間がかかる場合があります。

その代わり、薬を使わない治療ですから、薬に慣れて例えば卵胞が育たなくなるとか、そういう心配はありません。また月経の際の体調悪化(PMSや月経痛)などが改善し、肩こりや腰痛、冷え症などが改善することもあります。

例えば排卵障害という状態があります。脳下垂体性ならストレスなどが原因となります。そうならば肩こりや首こりの治療も行うと効果的です。

卵巣性の排卵障害であれば、多嚢胞性卵巣(PCOS)などが割合多いです。これは西洋医学的にはクロミッドなどによる排卵誘発が第一ですが、繰り返していくとだんだん薬が増やさないと卵巣が反応しなかったり、薬では効果が出なくなったため注射で排卵誘発を行ったら、卵が出来すぎて多胎妊娠を防ぐために、その周期は子作り禁止・治療は中止とか、があります。

こうした場合などは数周期体を休め、鍼灸治療で体調を整えるとまたクロミッドが効き出すことが良くありますし、それで妊娠される方も多いです。

日本人のPCOSは、糖代謝の異常体質(インスリン抵抗性)が絡む方が多いそうで、鍼灸治療は糖尿病の方も治療に来られるくらい、こうした体質に良い高効果があります。

自然妊娠されるかな、と思われた方で、1年2年となかなか妊娠せず、とうとう体外受精まで来てしまった方がおられました。ただこの方は良い卵も採卵で来たし、胚移植直前の現在は、子宮の内膜も十分厚く、よい結果が得られるのではないかと期待しています。

まじめに根気よく頑張ったので、神様も味方するのだと思います。

 

 

 

日曜は診療の傍ら研究を

コロナ禍になって、日曜日によくあった会議はリモートでしかも平日開催。

学会も研修もなくなり、やがてリモート開催に。

そんなわけで手持無沙汰な休日の日曜を半日診療したり、通常の診療日になかなかできない男性不妊のスクリーニングを行うことにして早2年。

朝早く犬の散歩を済ませ、マックか吉野家で朝食を。

朝食を食べ終えて店を出ると見事な朝焼けが・・・

この日は雪化粧になったのでした。

いや~寒い寒い。。。

朝8時から精液検体を持ち込んでいただき、1ミリリットル中の精子の数、運動する精子の数、運動の様子を観察します。

いろいろレンズを試しましたが、オリンパス製が一番良いようです。顕微鏡部門を売り飛ばしたそうですが、ちょっと寂しいですね。

だいたいが女性ばかりが治療に来ますが、もし夫のほうに男性不妊があって、知らずにのんきに奥さんだけに鍼灸を行っていたのでは手遅れになる時があります。

この日測定したご主人の精液は、実にエクセレント!

 

 

 

 朝からいいもの見せていただきました(笑)

 

 

 

 

数も多く、運動精子も多い。だけど寒さのせいか、動きがちょっと遅いかな。

念のため、亜鉛などのサプリを摂取することをすすめました。

精液を一滴(正確には10μℓ)載せるためにマイクロピベットを使い、マクラ―・カウンティング・チャンバーという、一種の計算盤に載せて精子を数えます。

この計算盤、メッチャ高価です。

それでも1個使用すると、使用後に洗浄~乾燥~消毒を行うので最低半日は使用できません。

そんなわけで当院では予備にもう1個購入してあります。

なお、室温が低い時期には計算盤や顕微鏡のレンズが曇ったりするので、検鏡の最低1時間前には治療室のエアコンを入れて室温を上げるようにします。

なかなか手間がかかるし、大変なんです。

この精液測定は、現在当院の患者さんのみ無料で行っています。

前日までの予約制で、私は朝7時に来ていますので当日キャンセルは不可です。さすがに当日に無断キャンセルした方は、次回から有料(6千円で前払い)になります。

ジネコバックナンバー 入荷しました

当院に置いてある妊活フリーペーパーの『ジネコ』のバックナンバーを取り寄せました。

ジネコ、は、妊活や不妊治療について名だたるドクターが、実際に治療を受けている方がたの疑問に回答する内容で書かれています。

プレジネコ、は、まだ医療機関にかからない、妊娠を目指したばかりのカップルを対象にしています。

マイジネコ、は、まだ未婚の、特に学生の若い女性を対象に書かれています。

すべて無料ですので、ご自由にお持ち帰りください。

PCO(多嚢胞性卵巣)症候群への鍼灸の対応

すでに昨年の12月に私が所属する福島県鍼灸師会で講演させていただいた資料から、多嚢胞性卵巣(症候群=PCOS)について書いてみたいと思います。

月経の周期が長い、ひょっとすると3ケ月くらい月経がない。

その都度、産婦人科で注射や薬を服用し、やっと月経が来る、という方は多いものです。しかも30歳前後、もっと若めの女性で多いです。

ただ月経が遠くて不順なだけではなく、結婚すると妊娠しにくい原因となり、下記などのように何かと問題に なります。

  1. 排卵の予測が難しく、自然妊娠しにくい場合が多い(自然に排卵する場合)
  2. そもそも排卵しない=月経もない
  3. 不妊治療では排卵誘発に過剰に反応しやすい(多胎、OHSSなど)
  4. せっかく妊娠しても流産率が高い

当院など、鍼灸院に来院する患者さんでは下記のような事情を抱えて来院する方が多いです。

  1. クロミッドで卵胞発育があったものが、だんだん薬剤増量でも卵胞が発育しなくなったようなケースが多い
  2. hMGなどの注射や、経口薬でも増量すると多く卵胞が育ってしまい、その周期は治療中断となることがある
  3. 病院などで濃厚な治療を受けたのちの、低反応卵巣なども多い
  4. 年齢的には早発閉経を疑う場合がある
  5. 病院などでの治療が長期にわたることが多い

このような方には、当院では漢方でいう『瘀血(おけつ)』や『痰湿(たんしつ)』という証で、なるべく月経の周期が整うよう治療をすすめていきます。

下は昨年12月の講義で使用したスライドの1部です。

当院では患者さんの不妊歴も考え、3ヶ月~6ヶ月鍼灸治療を行った後、専門医を紹介し医療と併用で治療を続けます。

古い教科書には、多嚢胞性卵巣は男性化、肥満、多毛などの特徴があると書かれているものが多いですが、実はコメを主食とするアジア人種では欧米型の教科書のようなPCOの方は少なく、インスリン抵抗性体質のような隠れ糖尿病体質が関係するといわれています。

実際に、専門医から糖尿病の薬であるメトグルコを処方されている方も多いです。太ってもいない方が大半ですが、経口血糖負荷試験(OGTT)を行うと陽性の方も多いようです。

鍼灸は古くから糖尿の方にも効果があり、どこの鍼灸院でも行っている事実があります。こんなことからもPCOSに鍼灸が良いのかもしれません。

だいたい週に1回以上の密度の治療を3ケ月~5ケ月継続していくと、いったん効かなくなったクロミッドでまた卵胞が育ってくるとか、中には自然に妊娠する方も珍しくなく、鍼灸が効果を現す実感があります。

個人的な話ですが、月経不順があり、結婚前の一昨年から当院に通っていた親類がいました。詳しく話を聞き基礎体温表も確認すると多嚢胞性卵巣が強く疑われ、根がまじめで素直な女の子でしたので、すすめると結婚するまで根気強く鍼灸を続けていました。

結婚後もなかなか子宝に恵まれませんでしたが、私と相談の上、嫁ぎ先の近くの病院でクロミッドを使ったタイミング法を行ったところ、その周期に妊娠し、この年が明けるともう出産予定となります。

月経が不順で多くは間隔が遠い、というのはまだ軽めのPCOSで、前述しましたが注射やピルなどでリセットすると普通に排卵する周期に入ったりするものが多いですが、重症になると平気で3ヶ月以上も月経がなく、薬が効かない、注射もなかなか反応しないというよな重症もあります。

またせっかく妊娠しても、高アンドロゲン(男性ホルモン)下で子宮内膜に問題があると考えられ、流産も非常に多いです。

この話は昨年12月に、福島医大産婦人科学教室の山口明子先生にもお話しいただきました。

この時私は鍼灸の担当としてお話しさせていただきました。

日本伝統医療看護連携学会で話したこと・ミニセミナー

11月27日に仙台の第4回日本伝統医療看護連携学会のミニセミナーでお話しした内容について書きます。

ミニセミナーの持ち時間は1時間。

いつも全国の鍼灸師会さん(南は九州佐賀県、北は青森県)で講演を頼まれる時は実技を入れて3時間でお話ししています。

妊孕性を高める脳・報酬系の賦活作用の鍼灸、子宮内膜症など不妊体質の改善、多嚢胞性卵巣などの排卵障害、高齢不妊への対応など、また男性不妊全般の内容にすると、3時間×2回くらいのボリュームになります。

今回は1時間。しかも看護師さんなどの職種の方が多く、自分でできるセルフケアも紹介してほしい、となりました。

というわけで、内容は自然に子宮内膜症関連に。

まずは女性不妊篇

ヨーロッパ生殖学会の会長も務めた、ハンス・エバース博士の研究で、不妊患者における子宮内膜症の罹患頻度を挙げたものです。

不妊症=日本式でも1年の不妊期間の女性は、70%近くが子宮内膜症の罹患の確率があるとか。年々増加しているように見えますが、これは画像診断が進んだため発見が多くなったということだそうです。

サントリー医学研究所と京都大学の共同研究のスライドを示しました。

子宮内膜症の主訴は強い月経痛です。このせいで医療機関を受診するのは2割に満たないそうで、大部分は痛み止めなどの市販薬を常用してしのいでいるそうです。

この『痛み止めの常用』が、不妊の原因になる話。

卵子めがけて精子が泳ぐ『道しるべ』に、子宮収収縮を促し痛みの原因になる発痛物質であるプロスタグランジンのひとつが役に立っています。一方、痛み止めの薬の大半はこのプロスタグランジンの産生を抑制します。

つまりプロスタグランジンのブロックは、不妊の原因になるということです。

セルフメディケーションが悪い方向に進む、ということですね。

鍼灸や、自宅灸でセルフケアすると月経痛は改善しやすく痛み止めを使わないことで妊孕性を高めることにつながると思います。

看護師さんなど医療職の方々が多く聴講されていましたので、子宮内膜症の方の腹水が妊娠に及ぼす影響の研究をお示ししました。

数々の炎症性サイトカインが子宮内膜症を持った方の腹水中に存在し、妊孕能を下げ妊娠を妨げます。

またこうした腹水中の炎症性サイトカインを産生するのは、日本でも子宮内膜症のグレード分類に使われるアメリカ生殖医学会の分類の1~2期の軽症ほど多い、ということです。

軽症の子宮内膜症でも、妊孕能に大きく影響する、ということです。

実技では、看護師で鍼灸学校在学の学生さんにモデルをお願いし、ツボ2つを使った自宅灸のデモンストレーションを行いました。

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続いて男性不妊篇。

すでに子供がいるカップルの団男性の精液所見は、WHOの基準をはるかに超えた1ml中で8200万。

しかし同じ研究者(岩本教授・現国際医療福祉大)の未婚男性の平均は5000万くらいで、4人に1人は4000万以下だったそうです。

精液所見が落ちると自然妊娠するまでの期間が長くかかるという報告があります。

男性不妊に対する治療は、例えば高度な精索静脈瘤があれば手術適応となりますが、実際は男性不妊の治療では決定的なものは少なく、補中益気湯などの漢方薬や亜鉛などのサプリメントによるものがほとんどです。

そこで当院で行っている鍼灸治療による精液所見の改善をお示ししました。

動画でも2例ほど紹介しました。

そのうちの1例を。

妊活・不妊治療と喫煙、タバコの害(1) 卵巣・卵子へのダメージ

ぐっと少なくなった喫煙率ですが、残念なことに不妊治療を受けている方に喫煙されている方がいらっしゃいます。

喫煙が健康に良くないことはご存じで喫煙されているようですが、妊活、不妊治療には大きく足を引っ張り、せっかく妊娠しても流産死産の原因になり、また早産の原因になることをしっかり書いて行きたいと思います。

1)卵巣、卵子へのダメージ

タバコに含まれるニコチンやタール、その他多くの化学物質がエストロゲンやその他の卵巣由来のホルモンを抑制し、また卵子の持っている遺伝子異常を引き起こします。

つまり、閉経が早くなり(多くのデータでは4年早いという)、受精しなかったり、受精しても早期に成長が止まる受精卵になる恐れがある、ということです。

もちろん、胎嚢が確認出来た後の流産も多くなります。

男性の喫煙は、精子の遺伝子異常・DNA損傷を引き起こし、不妊ばかりでなく早期の流産に関係するといわれています。

(出典)日本医師会雑誌 平成20年4月号 第137巻 第1号

しばらくこのシリーズが続きます。

 

男性不妊の基準について考える 第4回開業塾の内容から

10月30日(日) 午後から当院で開催した開業塾の内容を書いてみたいと思います。

不妊症の約半分の原因は男性にあることは周知のことと思います。

そこで『男性不妊』の基準を挙げてみたいと思います。

WHO(世界保健機構)で、『これ以下だったら自然妊娠はまず不可能』という、最低基準が昨年改訂されました。

今まで広く全世界で使われていた基準は2010年版で、最新版は2021年版。

なぜに、精液の基準がこれくらいの数値ですよ、という由来は、過去の記事で書いています

WHO精液基準2010年版と、2021年版の比較は下のスライドとなります。あまり変わってはいません。

当院で挙児を望む患者さん(多くは女性)の初診時に、ご主人の精液所見について尋ねると、ほとんどの方は『医師に大丈夫と言われました』とか、『ちょっと少ないかもと言われた』とかあまり正確に答えられない方がほとんどです。

実際に妊娠したカップルの男性の精液所見はどうなっているかという調査報告があります。

聖マリアンナ医科大学の岩本教授(現・国際医療福祉大学教授)の調査報告では、全体で1ミリリットル中の精子は平均1億匹、運動率も56%くらいであったということです。

しかも、精液濃度の中央値は8200万匹だったそうです。WHOの基準ですと1500万とか1600万ですが。

いかがでしょうか?

WHOの精液基準を満たしているからと言って、全く安心できないことがわかると思います。

精液所見が低ければ、妊娠に至るまでの期間が長くかかることが大いにあり得ます。

当院では事前に検査した精液測定の数値を確認し、必要があれば当院へ持ち込んでいただいた精液を再測定しています。

卵子を調べることは大変ですが、射精した精子を測定することは鍼灸院レベルでも可能です。