「不妊症・子宝治療」カテゴリーアーカイブ

男性不妊の基準について考える 第4回開業塾の内容から

10月30日(日) 午後から当院で開催した開業塾の内容を書いてみたいと思います。

不妊症の約半分の原因は男性にあることは周知のことと思います。

そこで『男性不妊』の基準を挙げてみたいと思います。

WHO(世界保健機構)で、『これ以下だったら自然妊娠はまず不可能』という、最低基準が昨年改訂されました。

今まで広く全世界で使われていた基準は2010年版で、最新版は2021年版。

なぜに、精液の基準がこれくらいの数値ですよ、という由来は、過去の記事で書いています

WHO精液基準2010年版と、2021年版の比較は下のスライドとなります。あまり変わってはいません。

当院で挙児を望む患者さん(多くは女性)の初診時に、ご主人の精液所見について尋ねると、ほとんどの方は『医師に大丈夫と言われました』とか、『ちょっと少ないかもと言われた』とかあまり正確に答えられない方がほとんどです。

実際に妊娠したカップルの男性の精液所見はどうなっているかという調査報告があります。

聖マリアンナ医科大学の岩本教授(現・国際医療福祉大学教授)の調査報告では、全体で1ミリリットル中の精子は平均1億匹、運動率も56%くらいであったということです。

しかも、精液濃度の中央値は8200万匹だったそうです。WHOの基準ですと1500万とか1600万ですが。

いかがでしょうか?

WHOの精液基準を満たしているからと言って、全く安心できないことがわかると思います。

精液所見が低ければ、妊娠に至るまでの期間が長くかかることが大いにあり得ます。

当院では事前に検査した精液測定の数値を確認し、必要があれば当院へ持ち込んでいただいた精液を再測定しています。

卵子を調べることは大変ですが、射精した精子を測定することは鍼灸院レベルでも可能です。

妊娠初期の鍼灸治療について

当院での不妊治療・妊活治療で妊娠された方へは、20歳代、不妊歴が1年程度などで自然妊娠された場合などは、妊娠第12週くらいで鍼灸治療を終了します。

これは、流産などは無治療で妊娠された方と差異はないと考えているためです。まぁ鍼灸を続けても続けなくても、心配ないでしょう。

ただし、つわり症状や肩こり腰痛などのマイナートラブルがあれば、必要に応じて1週に1回~2週に1回程度の鍼灸治療をすすめる場合もあります。

35歳以上、また体外受精などで妊娠された場合は、妊娠第12週までは1週に1回の治療を続け、妊娠第12週以降は20週まで、2週に1回の治療をおすすめしています。

体外受精で授かった場合、多くはそれまでさまざまな治療をステップアップで進めてきた方が多く、また年齢も高くなっています。

体外受精で、例えば40歳で妊娠されると流産率が40%を超えるという報告もあります。

初期の流産は7割が偶発的な染色体異常といわれ、そもそも鍼灸で流産予防はできませんし、可能だとすればそれはそれで問題です。流産も必要あって起こる場合があるからです。

初期の流産の3割は黄体機能不全などホルモン環境などに原因があるそうで、これは母体が健全であれば防げるものと考えます。鍼灸の出番があるところです。

 

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もう数年も前の話です。

極端な肥満があり、年齢も40歳以上。それで体外受精で妊娠したら妊娠高血圧になった方がいました。ハイリスク妊娠で危険なので、妊娠後も管理的な鍼灸を続け、第27週までがんばって持たせて帝王切開で分娩し、児はNICUへ。

たまにランチを食べに行くお店で、かわいい女児が『ただいま~』と元気にランドセルを背負って飛び込んで帰ってきます。
ママも頑張って産んだ子供。

まだ顔つきにNICU卒業生のようにか弱いところが残っていますが、元気なかわいい女の子です。

妊娠されても、もし年齢が高かったら、不妊歴が長かったら、もうちょっと鍼灸を続けてみて下さい。

来シーズン分の『原坊の朝顔の種』確保しました(^^♪

9月中頃から満を持して体外受精や人工授精に臨んだ方が、続々とご懐妊いただき、大部分の方が育てていた当院で配布している『原坊の朝顔』。

中でもとりわけ妊娠運の強い種、佐藤さんちの『原坊の朝顔』の種をたくさんいただきました。

佐藤さんは東京にいる息子さんのおうちに、どうしても一人でもいいからお孫さんを授かってほしいと熱望していたそうです。

そりゃそうですよね。せめて一人は欲しい。私もわかります。

それで、当時、人づてに当院から原坊の朝顔の種を入手し、庭に蒔いて植えたそうです。

そして花が咲くころだったか。40歳を過ぎたお嫁さんがご懐妊したのだとか。しかもしかも、初めてのお子さんだとか。

それがご縁で、佐藤さんは熱心に当院に通ってめまいや膝痛を治療して治したのでした。

当院で治療して妊娠したのではなく、原坊の朝顔だけで妊娠した佐藤さんの念の籠った朝顔の種。

これは強力ですね。しかもお茶わん1杯分以上あります。

これを来シーズンは当院の患者さんにお分けしたいと思います。

佐藤さん、、、珍しい姓ではないのでそのまま書きました(^^♪

化学流産・化学妊娠について

9月も、もうもうじき終わり秋も深まる10月になります。

不妊治療、妊活治療をされていると、『化学流産(かがくりゅうざん)』に時々遭遇します。

妊娠の超初期に赤ちゃんが入る『胎嚢(たいのう)』を超音波による内診で確認出来て、正常妊娠(臨床的妊娠)と診断されます。

一方、胎嚢が確認できなくとも、尿検査などで妊娠反応が陽性になった場合で、その後胎嚢が確認できないまま月経のように出血があり、妊娠反応も消失した場合を化学(的)流産といいます。また出血して妊娠反応が消失するまでを、『化学(的)妊娠』ということもあります。

正確には妊娠の回数や流産の回数には数えないものですが、精子と卵が出会って受精し、受精卵(胚)から孵化(ハッチング)して、しっかり着床できずにそこで力尽きたものと考えられ、原因は受精した際の偶発できな異常だったと考えられています。

ヒトは膨大な情報を持った遺伝子をつなぐため、受精時には異常が出やすいといいます。

こうした化学流産は大変起こりやすく、妊活を意識している女性であるから気が付いたとも言えます。

大変残念な事象で諸行無常を感じますが、妊娠し出産しての卒業が一歩近づいたとも言えます。

 

P4(プロゲステロン)が高く、胚移植に進めないとは

たまにはお仕事の話を。

体外受精を行うには、人為的に卵巣から卵を採り(採卵=”さいらん”=といいます)、同時に採取した精子と受精させ、3日~5日くらい培養して卵子を成長させ、子宮が受精卵を受け入れる最適な状態のときに、子宮に受精卵を入れる(胚移植=”はいいしょく”)を行います。

その際、採卵を行うには通常、何らかの薬や注射を行って排卵誘発を行います。勝手に排卵しないように、卵が成長してきたら、排卵を抑制しながら卵が成熟したころを見計らって、超音波で内診しながら特殊な注射針を使い、卵を吸い取ります。

なお、卵は受精してから『卵子』と呼びます。受精前は『卵』と呼びます。

そうすると、鶏卵でも有精卵は『卵子』といわないと、かもです。

脱線しましたが、排卵誘発を行う際に、効果的に卵は育って採れそうかどうか、月経開始日3日目あたりで血液検査を行います。

月経開始ゼロ日目から数えるので、月経日が治療周期開始の基準日になります。また月経開始3日目は、卵巣を働かせるホルモン(FSH=卵巣刺激ホルモン)や、成長しかけの小さな卵から出てくるホルモン(E2=エストラジオール=エストロゲン=女性ホルモン)を測ります。

また参考的に、P4(プロゲステロン=黄体ホルモン)も測ります。

育った卵子は別名を『胚(はい)』とも呼び、子宮に戻すことを胚移植(はいいしょく)といいますが、特に培養5日目付近以降の胚盤胞(はいばんほう)と呼ばれる、子宮に着床する寸前の卵は、子宮が受け入れて着床できる期間が大変短く、半日もありません。

そのため、卵を育てる判断を行う排卵誘発の基準日(月経開始3日目)以外に、胚移植のためにも基準日を設けてその絶妙なタイミングを推定します。

それにはP4=黄体ホルモンを測ります。

P4が高すぎれば排卵した(と同じ)、基準日を過ぎてしまい、着床に最適な胚移植日を想定できず、無理に移植すればせっかくの良い胚が無駄になってしまうことがあります。

もし胚移植直前にP4が高すぎれば、その周期は胚移植せず、次の周期以降にまた採血して移植日を決めることになりますが、これが何度も続く方がいます。

人により排卵日が早い(月経周期が28日より早い)方がいて、その場合は採血する時期を早くするなどして、胚移植日も早くするようです。

問題は、月経開始日3日あたりでP4が高い場合は、前の周期で排卵しそこなった遺残卵胞の影響や、卵巣の老化などが疑われます。

胚移植直前の測定でP4が高くて胚移植キャンセルというのは、残念ではありますが、また最適な時期を選んで移植することで良い結果を得られる場合が多いですので、あまり心配はありません。

D3あたりのP4の基礎値が高いような場合は、鍼灸治療などで卵巣の若返り治療を行っていくと良いようです。

 

男性不妊・男性妊活での鍼灸の効果

不妊には、男性に原因がある割合は約5割あります。

近年、女性の卵子老化が大きな問題となって取り上げられており、そういう話題はよく見聞します。

一方、いまだに男性については加齢による精子の劣化や精液初見の悪化など話題になることが少ないように思います。

実際には、男性も女性同様、同じ男性であっても年齢によって大きく悪化していきます。

男性不妊かどうかの線引きは、WHOの精液所見基準があります。

最新版は2021年版がありますが、今でも国内で多く使われているのは2010年版です。

WHOで男性不妊の基準を決める際の『基準値』は下記グラフのような研究から導き出されています。

出典:オックスフォード大学出版局
Human Reprodacution Vol16、P231-P245、2010

結婚などで過去1年以内に自然妊娠された、世界5大大陸8か国、1,953人を対象に、また比較として世界5大大陸5か国の男性965名を比較群として調査したものです。

下限・上限それぞれ2.5%をカットした95%信頼区間で、精液の量では2.0ml、精液濃度では1500万匹/ml、精子の運動率では50%をそれぞれ下回った群では1年以内に自然妊娠者がいなかった、というものです。

現在は11年ぶりに改訂された2021年版となり、それぞれ1.4ml、1400万匹/ml、40%、となっています。

非常に大切なことは、ここで『基準値』といわれているのは、グラフのピンクに染められた縦帯の付近であり、『これ以下だと自然妊娠できない』という『最低基準』です。

ですから、精液所見を調べた際、主治医が『基準を満たしています』みたいなことを言われても、まずは数字を確認してみましょう。

参考に、国内では国際医療福祉大学の岩本教授の調査報告が有名です。
出典:ブリティッシュ・メディカル・オープン
Teruaki Iwamoto, et al. BMJ Open. 2013.DOI: 10.1136/bmjopen-2012-002223
1999年から2002年にかけて札幌、大阪、金沢、福岡で不妊治療を実施していないで妊娠したカップルの日本人男性(20~45歳 792名、年齢中央値31.4歳)の精液を調査したもの。

結果:上記国内4都市の男性50パーセンタイル中央区間では、精液量3ml、精液濃度8,400万匹/ml、総運動率は66%でした。

なお、最近当院で妊活目的で3ケ月間週に1回しっかり通院治療した方の精液所見の変化をビジュアルでご覧ください。

動画の左側は治療開始時のもので、右は週に1回・3ケ月治療後のものです。

動画では約3倍の改善が確認できると思います。

この方は治療前の精液所見では男性不妊とは言えないレベルですが、熱心に治療に通われ、このように大きく改善しました。

もちろん、精液の量、数、運動率が改善することは妊娠しやすくなったことを示唆します。それはずっと上で示したグラフで理解できるでしょう。

当院では客観的に判断できるよう、当院に通院されている方で希望された方には精液測定を無料で行っています。

 

 

那須塩原 西那須野での不妊鍼灸は、赤田山はり・きゅうマッサージ接骨院へどうぞ

日曜日開催した開業塾の続編です。

講義とツボ取りの実技後は、つい最近低出力レーザー(東京医研・スーパーライザーPX)を導入した当院の愛弟子、赤田山はり・きゅうマッサージ接骨院の高橋夫妻へ、レーザーを使った不妊鍼灸のミニセミナーを行いました。

JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)の会長である中村一徳先生が、レーザー+鍼灸で胚盤胞獲得率が著しく改善することを日本レーザーリプロダクション学会で発表されましたが、この研究に使ったのは東京医研のスーパーライザーPXです。

最新型からすると一世代前の物になりますが、実に素晴らしい機械で、おそらく栃木県県北で不妊治療を行っている鍼灸院で導入されているところはないでしょう。

このレーザーの照射方法は様々あり、私もJISRAM副会長と前身の不妊鍼灸ネットワーク時代から中村一徳先生から多数教わり、その効果は実感しています。

上の写真は、赤田山はり・きゅうマッサージ接骨院の加洋子先生に、星状神経節レーザーを照射しているところです。

採卵数の改善のほか、胚盤胞獲得率の改善、そのほか、着床前スクリーニング(PGS)に合格した胚では、レーザー+鍼灸を行った際の着床率向上(60%台→80%台)など、卵の質のみならす、子宮要因や免疫要因などでの着床率改善についても検証できています。

赤田山はり・きゅうマッサージ接骨院のホームページはただ今準備中ですが、栃木県北の妊娠希望の方へ、特におすすめします。

赤田山はり・きゅうマッサージ接骨院

〒329-2748 栃木県那須塩原市上赤田238-437
電話 0287-46-5598

http://akadayama.com/

しつこいですが、私の愛弟子です。

日曜日は私塾・開業塾を開催しました

昨日は日曜日。

7月2回目の日曜診療を半日湯やり、午後からは当院主催の勉強会、3回目になる『開業塾』を開催しました。

テーマは子宮内膜症で、不妊に関するほか、続発性月経痛、月経困難症についてでした。

講義をzoomを使いリモートにして、いろいろなところから参加して頂きました。

また当院の会場参加者には、ツボの取り方の実習を行いました。

みなさん勉強熱心ですね。次回は10月頃、男性不妊をテーマにして開催します。