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不妊治療が健康保険適応で変わったこと

一昨年4月から、周知のように病院での不妊治療に健康保険が使えることになりました。

今までも混んでいたのに病院ではさらに激混みとなっているところが多いようです。

施設によって、さまざまな技術などを研究し、卵巣刺激や採卵、培養技術や移植技術などに特色があり、当然に対価としての治療費が様々でしたが、これに結構保険が使えるようになると施設ごとの固有の技術などが無視されていて、すべての施設で満足した治療が行われているか、ちょっと考えてしまいます。

なので、あえて健康保険を使わず自由診療で今まで通りに診療をしているところがあるそうです。しかもまた、そうした施設もまた今まで通り、大変な混み様なんだとか。

驚いたのは東京の加藤レディスクリニックでも保険が使えるとか。ここに今も数名通われています。

健康保険とは関係ありませんが、加藤レディスクリニックは、先代の院長の頃はほぼクロミッドだけの低刺激法による卵巣刺激を行っていました。今はrFSH製剤やFSH製剤なども普通に使っているようです。このクリニックで授かった当院の患者さんもだいぶいらっしゃいます。

今まで健康保険が使えるようになるまでは、誘発などで採卵きた数個の卵を大事に大事に胚移植していたようでした。

一昨年から始まった健康保険の適用、は採卵の回数に関係なく、移植の回数に上限があるため、いい卵だけとれるように何度でも採卵するように見受けられます。

一方、女性が生涯に育てる卵には限りがあります。なるべく良い卵に出会える確率を上げるため、鍼灸などはぜひ試していただきたいところです。

最近、東京や関西の不妊治療施設ではPRP療法という、卵巣の中の休眠血管を働く血管へ変えるという、一種の再生医療を不妊治療に応用しているところが多くなってきました。

眠っている血管を育てると、血行次第では採卵できなかった方がまた採卵できるようになる、ということですが、これは保険の使えない自費診療です。

日本の医療制度では保険の使える治療と使えない治療を同一の施設で行うと、混合診療となり一切の保険が使えなくなります。

そのためこの夢の治療を行うと、保険の使えない高額なものになります。

当院でも卵巣機能の弱っている方、採卵成績の悪い方に、半年くらいの鍼灸治療を行うと採卵できたり胚盤胞の獲得率が向上するかたが多くいます。

なぜ効果があるかについては、レーザーを照射しながらの鍼灸は休眠血管の再稼働を促し、本来成長できなかった卵ができるようになったのではないかと思っています。

2016年に福岡の日本鍼灸師会全国大会が開催されましたが、そこで私は講演を頼まれ、下記のリンクのような内容で講演してきました。下のほうには、鍼灸+レーザーにより新生血管が生じ結果的に卵が育つようになったのだと考えています。

当院の治療についてその2(福岡で講演してきた内容メモ)

体外受精でなかなかいい卵に出会えない方はぜひ鍼灸をおすすめします。鍼灸を行っても健康保険には影響しません。

精液所見の推移(精液量、精液濃度=数 精子運動率、1射精あたりの運動精子総数)について

7月30日日曜日は、早朝7時からの診療を行い、朝8時の患者さんで店仕舞い。

その後、私は東京での不妊治療のセミナーを受講しに行きます。

講師は、鍼灸たくみ堂https://www.takumidou.com/の河村先生。
日本の不妊治療の先駆者です。

8月27日には私も株式会社カナケンさんのセミナー講師を依頼されていますが、いろいろな先生の治療を学ぶことは大切です。

一方、当院の若手・和樹先生ですが、長野市で男性不妊のセミナー講師を依頼されています。

下のグラフは、ある患者さんの精液所見の推移です。

複数例でのスタディではないので、チャンピョン症例っていう感じですが、男性不妊の鍼灸の場合、十分な回数や頻度で十分な期間治療すると、たいていの方はグラフのように改善します。

全体の精液量は、割合早い時期から改善します。

精子の製造には70数日かかると言われていますが、それ以前に倍増することがあります。これは、精液のほとんどの成分である液体部分(精漿)が、睾丸ではなく前立腺や副睾丸、精嚢腺で作られていることに関係します。

すなわち、前立腺などには早期から効果が表れるのでしょう。

1ミリリットル中の精子の数は、治療開始後127日目が突出して1億6500万ありますが、その前は5750万。精子の数は変動が大きく、特別調子が良かった、ということでしょう。

精子の運動率は99日目以降からグンと上がっています。

精子の数がたくさんあっても、運動精子が多くないとダメです。

なので、1ミリリットル中の運動精子の数を算出し、、、

そこへ増量した精液全体量を掛けると、1回の射精あたりの運動精子の数が算出できます。

自然妊娠などはまさに、精液全体での運動精子数がものを言います。

鍼灸治療前は、3,060万。治療開始77日後で4,200万。
つまり、1回の射精で3,000万~4,200万です。

鍼灸治療開始後、治療の効果が表れてきて、99日後では1億3,900万。

突出してよかったときは全体で5億7千800万。その後の計測では2億8千万~2億100万。

つまり鍼灸治療前は1回の射精で3,000万くらいだったのが、2億~6億くらいまで改善したということになります。

これが表すことは、体外受精を行っていた方が人工授精へ。人工授精を行っていた方が自然妊娠へ。ステップダウン妊娠が視野に入る、ということです。

 

今年度初の開業塾

5月14日の日曜日は、午前中は自分の研究と数人の治療をしました。

午後からは、愛弟子3名を含めて当院会場で12名、リモートで4名の16名で開業塾を行いました。

テーマは、不妊症患者さんへの問診の仕方。

しっかりした知識を持ってこそ、充実した問診が実現します。

累積妊娠率の話から、卵胞発育のメカニズムを話しながら、問診の進め方を講義しました。

我々の鍼灸治療は体質の改善です。妊娠しやすい体質へ改善させる治療は長期にわたる場合がありますが、副作用はないし、もっとも進んだ分野である生殖医療を補完することができます。

私は、同じ志を持った仲間には隠さずなんでも教えます。

同じ志とは、設け主義を否定し患者第一、日本鍼灸を守り育てていく仲間です。最低でも、地元鍼灸師会に所属していることが条件です。

今年は、この私塾である開業塾のほか8月にカナケンさんの商用セミナー講師(仙台)、11月に北九州市・産業医科大学で開催される日本伝統医療看護連携学会でシンポジスト登壇。同じ11月に仙台市で開催される全日本鍼灸学会東北支部学術集会で講師をつとめます。すべて専門である不妊症治療です。

採卵成績が4倍向上した方

専門医での不妊治療に健康保険が適用になり、早1年が経ちました。

体外受精など高度生殖医療の場合、採卵の回数ではなく、初回1児あたり胚移植6回までが健康保険が適用となるようです。

そうすると、採卵・培養、胚移植の流れも大きく変わってきたように感じます。

1回の採卵で複数個採卵できた場合、健康保険適用の6回以内に妊娠できるよう、なるべく少ない回数の胚移植で妊娠できるように初期胚ではなくなるべく胚盤胞まで培養し、移植することが多くなったように感じます。

また、胚盤胞を目指して培養を続けるにも途中ですべての卵子の分割が停止するなどリスクがある方は、初期胚を2個くらいの複数移植を行うケースも見られるようになりました。

つまり、やはり、採卵の回数は多くなっても、胚移植の回数はなるべく少なく、というように患者さんの経済的負担を軽くするように配慮しているのでしょう。

昨年10月末から当院に来院されている方は、卵巣にチョコレート嚢腫もあり採卵しても卵質が良くなかったようで、1回目の採卵で6個採卵できて、すべて胚盤胞を目指して培養を続け最終的に1個の胚盤胞を凍結できたそうです。

ただしその胚盤胞を移植しても妊娠できなくて、採卵成績の改善・卵質の改善を希望されて当院でしっかり6ヶ月治療しました。

しっかり鍼灸を行った6ヶ月後の採卵では8個採卵できて、5日目胚盤胞が2個、6日目胚盤胞が2個。合計では4個の胚盤胞になりました。

前回6個採卵→1個胚盤胞 今回8個採卵→胚盤胞4個
※誘発法、使用薬剤などは全く同じ

当院でのレーザー+鍼灸は、効果の差はあってもこのように採卵成績や卵質の改善に効果があります。

ただし、治療の頻度は非常に厳密で、年齢にもよりますが最低7日に1回以内、治療開始時は3~5日に1回の治療を3ヶ月続け、その後7日以内に1回を続けていくようにしています。

たまにしか治療に来ない、というのではなんの効果もありません。

この内容は、当院主催の不妊治療研究会『開業塾』で今度の日曜日、5月14日(日)に講義します。

男性不妊の改善

11月の末から週に2回鍼灸治療を行っている方がおりました。

当院での顕微鏡観察で男性不妊の所見があったため、頑張って根気強く通われました。

鍼灸治療は、週に1回は全身調整と当院でよく行う電気鍼を。
その週に、今度は電気鍼のみ。こんなパターンで。

初診時の精液所見は、

精液量 1.7ml、精液濃度4,350万/ml、総運動率41.4% 運動精子濃度 1,500万/ml
これだけ見ると悪くなさそうな所見ですが、下の動画を見るとわかりますが精子の運動は痙攣のような、頭部を振るだけみたいなものばかりでした。

しっかり4ケ月、週に2回。びっくりするほどの改善に。

精液量 6.5ml 精液濃度 1億6,550万/ml  総運動率 53.8% 運動精子濃度 8,950万/ml

※鍼灸治療のほか、国際医療福祉大学リプロダクションセンターでよく勧めている精育支援サプリメントの服用も勧めていました。

いかがでしょうか。しかも運動状態がまるっきり変わって元気のよい精子になっています。

患者さんが喜んだのは言うまでもありません。

精液量のみ、1.7とか3.5、6.5と1桁なのでグラフで変化は見えないため、10倍の単位でグラフ化してあります。

この貴重な症例をグラフにするとこんな感じです。

今年の学会発表の素材になりました。

今までの経験で言うと、おおむね3~4ケ月の鍼灸治療で精液所見が改善することがわかっていましたが、それを裏付けるものとなりました。

不妊治療に健康保険が使えるようになり、体外受精への敷居も低くなりましたが、胚移植の回数に制限があります。

男性への鍼灸治療を行うと、妊娠もしやすくなるし、場合によっては体外受精→人工授精、人工授精→自然妊娠など、ステップダウンによる妊娠も期待できます。

何度もタイミングで頑張っているカップル、体外受精で頑張っているカップルの方々、鍼灸治療で精子力のアップはいかがでしょうか?

鍼灸の効果 体質改善

不妊治療などでの、妊娠体質や卵の質の改善、またアレルギーや認知症の予防など、鍼灸治療ではありとあらゆる症状や疾患に人間の本質的な体の状態を改善させることを目指します。

例えば不妊治療では、何度も採卵を行い、次第に卵の質が低下してきたり採卵できる数が少なくなってきたりします。

これは治療期間が長くなればその分だけ体は老化します。卵巣の老化は考えているより早いことが多いです。

また薬や注射で卵巣を刺激すれば、それだけ卵の在庫を多く使うことになり卵巣の老化を早くします。

鍼灸やこうした老化を防ぎ、場合によっては若返らせる効果があります。

例えば下に2つのグラフは、ある難病の方の腎機能の指標である推定GFRとクレアチニンの推移を追ったものです。

推定GFRは、腎臓での濾過量を表しています。腎臓が老化するとこの数値は低下します。

この患者さんは、40ml/分/1.73立方メートルでした。1分間に40mlしか濾過していない状態でしたが、鍼灸治療を行うと12日目から濾過量が増えて、正常域まで改善しました。

通常、年齢とともに腎機能が落ちてきますが、年齢以上に悪化していくものが慢性腎不全(CKD)と言われています。

この方は病院での診断で、難病のほか慢性腎不全と言われていました。

 

同じ方のクレアチニンです。

やはり鍼灸開始後、10日目以降からクレアチニンが改善し、正常域になっています。

腎機能は生命力を表しているともいわれます。あらゆる症状や疾患の治療や予防に大切な機能ですし、人間の根源的なエネルギーを表しますので、不妊治療での卵子改善や男性不妊での精液所見改善にも必要なものだと思います。

なお鍼灸治療によって改善した腎機能は、鍼灸治療中止により緩やかに元の状態まで悪化してきます。その期間は結構長く、3~半年くらいのようです。

そのくらい鍼灸は効果があるのでしょう。

いろいろな症状が改善しても、2~3週に1回くらい鍼灸治療を行い健康管理をしていると、どんな方でも年齢以上に若い体になっていきます。

胚移植とERAテスト

胚盤胞を移植する場合、子宮内膜に着床するのは排卵時刻を正確に特定したとしてその120時間後と言われています。

これは精子と卵子が出会って受精し、120時間後に着床寸前の胚盤胞に育つからです。

ヒトの子宮が胚盤胞を受け入れて着床できる時間は短く、わずが5時間足らずと言われています。

当院の患者さんで、良好な胚盤胞を何度も移植しても妊娠出来ない、と言う方がいました。

ある病院で、Gardener分類でグレード5を3回くらい移植し、病院を変えて、その病院では独自のグレード付け付けでしたが、これを移植すれば妊娠率が50%はあると言う最高ランクの胚盤胞をやはり3回移植して妊娠せず。

その病院とは、新宿の加藤レディースクリニックでした。

ERAテストという、着床の時期を調べる検査を行うと着床の時期は12時間ずれて遅かったとの事でした。

加藤レディースクリニックでは、AからFまで、胚の大きさ、胚盤胞になるまでの時間、AHAの有無、患者の年齢など様々な条件から胚のグレードを付けています。

加藤レディースクリニックでのグレードAと言う胚はなかなか得られないのですが、たぶん長らく続けたレーザーと鍼灸も効果があったのでしょう。

適当に思い出して書くわけにもいかず、カルテを見ながら書くと、この方は当院来院前に採卵3回、胚移植7回(胚合計7個)を行っていた難治性不妊と言われる方です。

胚移植は4回以上は成功率が上昇せず、そこから4回以上の反復不成功例を難治性不妊と呼ぶそうです。以前は胚移植2回以上不成功を難治性不妊といったそうです。

転院先の加藤レディースクリニックでグレードA,B,Aと胚移植を続け妊娠せず、ERAテストを実施を行い、143時間プラスマイナス3時間の結果をもとに胚移植を実施し、見事に妊娠出産されました。

長らく通院しレーザーと鍼灸を行い、もうだめかと思った最後の胚で先週妊娠判定陽性を得た方は、胚盤胞を使い果たした後残った早期胚移植でした。

早期胚は胚盤胞のように『移植の窓=implantation window』は存在しないと言われており、着床の時期は広いようです。もしかしたらこの方もERAテストを実施すると、胚盤胞移植の場合の着床の時期がずれていたといわれたかもしれません。

もっとも、最近はERAテストについて欧米などでのRCT(ランダム化比較試験)で否定的な意見も見られるようになりました。

妊娠へのヒント タイミングはお早目に

たまには、妊活・不妊治療のお話を。

妊娠希望で当院に来院される方のかなりの割合で、市販の妊娠検査薬を使われている方が多いようです。

また基礎体温を測り、毎日グラフに記録している方の基礎体温表を見させていただくと、排卵当日を非常に重視してタイミングを取られている方が非常に多いです。

下のグラフは、排卵日をゼロ日として、いつ性交すると妊娠しやすいかを表しています

一番妊娠しやすいのは、排卵前2日と言う事になります。

排卵検査薬にこだわりすぎると、なかなか妊娠しにくくなると言えます。

また、26歳までの年齢と35歳以上の年齢では妊娠率が2倍も違います。

35歳以上では卵子の老化や様々な条件が重なり、妊娠適齢期から外れて行きます。

当院での鍼灸治療は一種のアンチエイジング治療であり、卵巣や子宮を若返らせでいると考えています。

体外受精を行っていて、なかなか妊娠出来ない方で、さらに採卵の成績が良くない方に対し、一定の頻度で当院の治療を行って行くと、同じ薬剤や誘発方で採卵しても、採卵数が増えたり胚盤胞に到達する数が増えたりします。

今年はこの事について、学会で発表したいと思います。