「不妊症・子宝治療」カテゴリーアーカイブ

採卵成績が4倍向上した方

専門医での不妊治療に健康保険が適用になり、早1年が経ちました。

体外受精など高度生殖医療の場合、採卵の回数ではなく、初回1児あたり胚移植6回までが健康保険が適用となるようです。

そうすると、採卵・培養、胚移植の流れも大きく変わってきたように感じます。

1回の採卵で複数個採卵できた場合、健康保険適用の6回以内に妊娠できるよう、なるべく少ない回数の胚移植で妊娠できるように初期胚ではなくなるべく胚盤胞まで培養し、移植することが多くなったように感じます。

また、胚盤胞を目指して培養を続けるにも途中ですべての卵子の分割が停止するなどリスクがある方は、初期胚を2個くらいの複数移植を行うケースも見られるようになりました。

つまり、やはり、採卵の回数は多くなっても、胚移植の回数はなるべく少なく、というように患者さんの経済的負担を軽くするように配慮しているのでしょう。

昨年10月末から当院に来院されている方は、卵巣にチョコレート嚢腫もあり採卵しても卵質が良くなかったようで、1回目の採卵で6個採卵できて、すべて胚盤胞を目指して培養を続け最終的に1個の胚盤胞を凍結できたそうです。

ただしその胚盤胞を移植しても妊娠できなくて、採卵成績の改善・卵質の改善を希望されて当院でしっかり6ヶ月治療しました。

しっかり鍼灸を行った6ヶ月後の採卵では8個採卵できて、5日目胚盤胞が2個、6日目胚盤胞が2個。合計では4個の胚盤胞になりました。

前回6個採卵→1個胚盤胞 今回8個採卵→胚盤胞4個
※誘発法、使用薬剤などは全く同じ

当院でのレーザー+鍼灸は、効果の差はあってもこのように採卵成績や卵質の改善に効果があります。

ただし、治療の頻度は非常に厳密で、年齢にもよりますが最低7日に1回以内、治療開始時は3~5日に1回の治療を3ヶ月続け、その後7日以内に1回を続けていくようにしています。

たまにしか治療に来ない、というのではなんの効果もありません。

この内容は、当院主催の不妊治療研究会『開業塾』で今度の日曜日、5月14日(日)に講義します。

男性不妊の改善

11月の末から週に2回鍼灸治療を行っている方がおりました。

当院での顕微鏡観察で男性不妊の所見があったため、頑張って根気強く通われました。

鍼灸治療は、週に1回は全身調整と当院でよく行う電気鍼を。
その週に、今度は電気鍼のみ。こんなパターンで。

初診時の精液所見は、

精液量 1.7ml、精液濃度4,350万/ml、総運動率41.4% 運動精子濃度 1,500万/ml
これだけ見ると悪くなさそうな所見ですが、下の動画を見るとわかりますが精子の運動は痙攣のような、頭部を振るだけみたいなものばかりでした。

しっかり4ケ月、週に2回。びっくりするほどの改善に。

精液量 6.5ml 精液濃度 1億6,550万/ml  総運動率 53.8% 運動精子濃度 8,950万/ml

※鍼灸治療のほか、国際医療福祉大学リプロダクションセンターでよく勧めている精育支援サプリメントの服用も勧めていました。

いかがでしょうか。しかも運動状態がまるっきり変わって元気のよい精子になっています。

患者さんが喜んだのは言うまでもありません。

精液量のみ、1.7とか3.5、6.5と1桁なのでグラフで変化は見えないため、10倍の単位でグラフ化してあります。

この貴重な症例をグラフにするとこんな感じです。

今年の学会発表の素材になりました。

今までの経験で言うと、おおむね3~4ケ月の鍼灸治療で精液所見が改善することがわかっていましたが、それを裏付けるものとなりました。

不妊治療に健康保険が使えるようになり、体外受精への敷居も低くなりましたが、胚移植の回数に制限があります。

男性への鍼灸治療を行うと、妊娠もしやすくなるし、場合によっては体外受精→人工授精、人工授精→自然妊娠など、ステップダウンによる妊娠も期待できます。

何度もタイミングで頑張っているカップル、体外受精で頑張っているカップルの方々、鍼灸治療で精子力のアップはいかがでしょうか?

鍼灸の効果 体質改善

不妊治療などでの、妊娠体質や卵の質の改善、またアレルギーや認知症の予防など、鍼灸治療ではありとあらゆる症状や疾患に人間の本質的な体の状態を改善させることを目指します。

例えば不妊治療では、何度も採卵を行い、次第に卵の質が低下してきたり採卵できる数が少なくなってきたりします。

これは治療期間が長くなればその分だけ体は老化します。卵巣の老化は考えているより早いことが多いです。

また薬や注射で卵巣を刺激すれば、それだけ卵の在庫を多く使うことになり卵巣の老化を早くします。

鍼灸やこうした老化を防ぎ、場合によっては若返らせる効果があります。

例えば下に2つのグラフは、ある難病の方の腎機能の指標である推定GFRとクレアチニンの推移を追ったものです。

推定GFRは、腎臓での濾過量を表しています。腎臓が老化するとこの数値は低下します。

この患者さんは、40ml/分/1.73立方メートルでした。1分間に40mlしか濾過していない状態でしたが、鍼灸治療を行うと12日目から濾過量が増えて、正常域まで改善しました。

通常、年齢とともに腎機能が落ちてきますが、年齢以上に悪化していくものが慢性腎不全(CKD)と言われています。

この方は病院での診断で、難病のほか慢性腎不全と言われていました。

 

同じ方のクレアチニンです。

やはり鍼灸開始後、10日目以降からクレアチニンが改善し、正常域になっています。

腎機能は生命力を表しているともいわれます。あらゆる症状や疾患の治療や予防に大切な機能ですし、人間の根源的なエネルギーを表しますので、不妊治療での卵子改善や男性不妊での精液所見改善にも必要なものだと思います。

なお鍼灸治療によって改善した腎機能は、鍼灸治療中止により緩やかに元の状態まで悪化してきます。その期間は結構長く、3~半年くらいのようです。

そのくらい鍼灸は効果があるのでしょう。

いろいろな症状が改善しても、2~3週に1回くらい鍼灸治療を行い健康管理をしていると、どんな方でも年齢以上に若い体になっていきます。

胚移植とERAテスト

胚盤胞を移植する場合、子宮内膜に着床するのは排卵時刻を正確に特定したとしてその120時間後と言われています。

これは精子と卵子が出会って受精し、120時間後に着床寸前の胚盤胞に育つからです。

ヒトの子宮が胚盤胞を受け入れて着床できる時間は短く、わずが5時間足らずと言われています。

当院の患者さんで、良好な胚盤胞を何度も移植しても妊娠出来ない、と言う方がいました。

ある病院で、Gardener分類でグレード5を3回くらい移植し、病院を変えて、その病院では独自のグレード付け付けでしたが、これを移植すれば妊娠率が50%はあると言う最高ランクの胚盤胞をやはり3回移植して妊娠せず。

その病院とは、新宿の加藤レディースクリニックでした。

ERAテストという、着床の時期を調べる検査を行うと着床の時期は12時間ずれて遅かったとの事でした。

加藤レディースクリニックでは、AからFまで、胚の大きさ、胚盤胞になるまでの時間、AHAの有無、患者の年齢など様々な条件から胚のグレードを付けています。

加藤レディースクリニックでのグレードAと言う胚はなかなか得られないのですが、たぶん長らく続けたレーザーと鍼灸も効果があったのでしょう。

適当に思い出して書くわけにもいかず、カルテを見ながら書くと、この方は当院来院前に採卵3回、胚移植7回(胚合計7個)を行っていた難治性不妊と言われる方です。

胚移植は4回以上は成功率が上昇せず、そこから4回以上の反復不成功例を難治性不妊と呼ぶそうです。以前は胚移植2回以上不成功を難治性不妊といったそうです。

転院先の加藤レディースクリニックでグレードA,B,Aと胚移植を続け妊娠せず、ERAテストを実施を行い、143時間プラスマイナス3時間の結果をもとに胚移植を実施し、見事に妊娠出産されました。

長らく通院しレーザーと鍼灸を行い、もうだめかと思った最後の胚で先週妊娠判定陽性を得た方は、胚盤胞を使い果たした後残った早期胚移植でした。

早期胚は胚盤胞のように『移植の窓=implantation window』は存在しないと言われており、着床の時期は広いようです。もしかしたらこの方もERAテストを実施すると、胚盤胞移植の場合の着床の時期がずれていたといわれたかもしれません。

もっとも、最近はERAテストについて欧米などでのRCT(ランダム化比較試験)で否定的な意見も見られるようになりました。

妊娠へのヒント タイミングはお早目に

たまには、妊活・不妊治療のお話を。

妊娠希望で当院に来院される方のかなりの割合で、市販の妊娠検査薬を使われている方が多いようです。

また基礎体温を測り、毎日グラフに記録している方の基礎体温表を見させていただくと、排卵当日を非常に重視してタイミングを取られている方が非常に多いです。

下のグラフは、排卵日をゼロ日として、いつ性交すると妊娠しやすいかを表しています

一番妊娠しやすいのは、排卵前2日と言う事になります。

排卵検査薬にこだわりすぎると、なかなか妊娠しにくくなると言えます。

また、26歳までの年齢と35歳以上の年齢では妊娠率が2倍も違います。

35歳以上では卵子の老化や様々な条件が重なり、妊娠適齢期から外れて行きます。

当院での鍼灸治療は一種のアンチエイジング治療であり、卵巣や子宮を若返らせでいると考えています。

体外受精を行っていて、なかなか妊娠出来ない方で、さらに採卵の成績が良くない方に対し、一定の頻度で当院の治療を行って行くと、同じ薬剤や誘発方で採卵しても、採卵数が増えたり胚盤胞に到達する数が増えたりします。

今年はこの事について、学会で発表したいと思います。

さかごの鍼灸治療

当院では、不妊や妊活治療を得意治療に掲げております。

現在まで、全国の多くの鍼灸師会や学会などで、当院の治療について講演させていただきました → 学会発表・講演歴

そのほか、、つわり症状、さかご(骨盤位)の方が良く来院されます。

当院での鍼灸治療でのさかごの改善率は、80%以上です。
ある年は、25人以上、連続で改善した時もあります。

26人目か27人目か、3回で来院をあきらめ帝王切開で分娩された方がいて、非常に残念な思いをして以来、改善率の追及をやめました。安全に治っていただく、それが最善です。

なぜにさかごが鍼灸で治るのか?

以下の科学的な理由があります。

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フランシスコ・ガルディニ『骨盤位矯正に対する灸の効果』
JAMA(米国医師会雑誌)1998;280(18):1580-4

・左右の至陰(足にあるツボ)に、15分ずつ棒灸を行う。

・結果、胎動回数が増加(平均35.35回→48.45回に増加)
頭位回転数も増加(62/130→98/130)

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高橋佳代『骨盤位矯正における温灸刺激の効果について』
東京女子医大誌1995.5(10)801-7
・実験と結果
至陰穴に温灸後、胎動が有意に増加し、施灸後15分で減少してきた。超音波ドップラーにて、子宮動脈(UtA)、臍帯動脈(UmA)の血管抵抗を調べてみると、施灸後が有意に低下している。
・考察
灸による子宮循環抵抗の低下は、子宮筋のトーヌスの低下を起こし、子宮筋の弛緩は胎動を容易にさせた。

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以上、鍼灸を行うと子宮動脈、臍帯動脈の血管抵抗が低下して血行が改善することにより、子宮筋が弛緩(柔らかくなる)というのが鍼灸によるさかご改善のエビデンスです。

なお、さかご(骨盤位)や正常の頭位は妊婦さんの腹部の触診ではまずわかりません。これは熟練した産科医でも確実にはわからないといいます。

そもそも、さかご(骨盤位)の発見は、スコットランドの医師、ウィリアム・スメリー(1697-1763)が世界で初めて発表されたそうですが、同じ時期・江戸時代の賀川流産科術・賀川玄悦が1765年に発表されています。資料にもよりますが、賀川玄悦が世界で最初にさかごを発見したともいわれています。

賀川流産科術の教科書 東京上野の科学博物館『医は仁術展』にて

つまり、超音波診断が登場するはるか以前、胎児は分娩直前に頭が下になって生まれてくる、と考えられ、さかごの概念がなかったとのことです。

加賀流産科術の、産科の模型 同じく医は仁術展より

私も妊婦さんを触診してさかごかどうか判別できませんので、治療の際には参考に超音波を使っています。胎児は通常、前にしか回転しませんので、鍼灸施術後は胎児の背中が上になるよう、妊婦さんに指導しています。

これもさかご治療の高改善率に寄与しているのでしょう。

当院のさかご治療は、超音波による観察料も含め1回4,300円です。治る方はだいたい5回以内の治療で治りますが、来院時の週数やさかごになってからの日数によりなかなか治りにくい方もおられます。

5回以上で治らなかった場合、6回目からは2,300円に施術料金を調整して患者さんの負担を軽減しています。

 

だいぶ前(2014年)に書いたブログの記事を思い出しながら書きました。
http://sanpei89.rakusaba.jp/diary/diary.cgi?no=1015

ジネコに執筆した記事 採卵成績の改善とピル

もう10年も前の話です。

当院に置いてある妊活のフリーペーパー『ジネコ』に、当院でも執筆したことがありました。

Q&A形式の記事で、当院では『変性卵しか採卵できないのに、ピルを服用して卵巣機能が悪化しないか?』に対しての問いでした。

この内容は当院の古いブログに書いてあります。
https://sanpei89.rakusaba.jp/diary/diary.cgi?no=1005

大きいサイズで見る →

変性卵は、採卵した際に採卵針などで外膜を壊してしまったとか直接卵子の老化を示す状態ではないようです。

またピルの連用も、現在は約半年間180日連続で使用できる、ヤーズ・フレックスなどがあります。

10年前の当時は21日服用+7日間の偽薬(休薬)というものが主流で、休薬期間をなくくして連続服用するとAMH(抗ミューラー管ホルモン)が低下する=卵巣機能・予備能が低下する、といった問題があったようです。

ピルについても、自然な排卵~月経を起こさないことから=悪というイメージがありますが、必要な方には非常に良いもので、もし私の家族が必要に迫られたら、躊躇しないで勧めます。

昨年はピルを長期服用していて、結婚後妊娠を希望されて鍼灸に来院した方が数名いましたが、ピルを中止して鍼灸を行ったらスムーズに妊娠された方が何人かいました。

中止すれば元通りの妊孕性=妊娠力が戻るようです。

ピルが必要な理由とは、長期的には月経痛がひどくて日常生活に差し支えるとか、PMS(月経前症候群)がきついとか、卵巣機能の温存でしょう。

鍼灸は月経痛に非常に効果があり、PMSにも効果があります。また卵巣機能の改善にも効果があります。

ピル中止後の妊活には、鍼灸も一緒に行うと非常に良いです。

 

今年初の診療日記、初妊娠

10年に1度の大寒波だそうで、なるほど気温も大変低く、雪もちらほら。この程度だったら、まぁ普通の雪なんじゃないかなと。

不妊治療に健康保険が使えるようになり、想像していたことですが鍼灸院に来院する方もだいぶ減ったように感じます。

それでも、以前から何度も体外受精を受けられてそれでも妊娠されなかったような方など、だいぶ以前から通院され、良い卵が多く取れるようになり、昨年より無事妊娠20週を迎えて卒業されるかたが続いています。12月の卒業は5名で、今月の卒業が1名となり、さすがに通院中の不妊患者さんが減ってきました。

 

昨日は3名の妊娠された方が来院

昨日は、自然妊娠できそうでなかなか授からなく、とうとう体外受精まで来てしまった30代初めの患者さんの、初めての妊娠判定後の来院でした。

結果は3週5日の判定で血中hCGが50、4週0日で320以上。しっかりした陽性だったようで、遅かったですが今年初めての妊娠例となりました。

毎回、黄体期後半は基礎体温表を確認する私も緊張します。
逆に、もう基礎体温表は記録しなくてもいいですよ、と告げるときは大変うれしいものです。

郡山市の乾マタニティークリニックが診療していたころ、1月4日の診療開始の日に8名の妊娠陽性があったと乾マタニティークリニックの培養士の菊地瑛子先生に聞いたことがありますが、実はこのうちの4名が当院の患者さんでした。この年は当院の妊娠例が80名を超えた年でした。

多分こんな時代はもうないのでしょう。ここ数年は年間の妊娠数は40~50くらいです。また年間の不妊の新患数は70名くらいです。

数回以内に来院しなくなった方を除き、妊娠率にすると、まじめに通院された方については大まかに70%くらいの妊娠率になると思います。

昨日は、30代半ばの方が妊娠中の腰痛で来院しました。

この方は不妊で当院へ来院された方でした。
自然妊娠した後流産し、その後なかなか妊娠しないため当院へ来院。途中で西那須野の石塚産婦人科さんを紹介させていただき、病鍼連携して治療していて妊娠されました。

妊娠も23週の中期ですが、看護師さんでとても頑張り屋の方。腰痛があってもお仕事を頑張っていたそうです。

妊娠中は、湿布は使えません。特に妊娠中期以降は胎児の腎動脈を細くするような副作用があるといわれています。

昨年末に妊娠19週を過ぎ、もう流産はないだろうといったん鍼灸を中止しましたが、仕事も大変ですし、妊娠による体の負担は大きくなるばかり。肩こりや頭痛もあるので、副作用のない鍼灸を行いました。

治療が終わって一応は念のため、胎児の確認をエコーで行います。これは病気の診断ではなく、鍼灸治療後にも胎児に異常はないか確認するために当院では妊婦さんの治療の際はなからず行っているものです。

23週ともなると胎児も大きくなります。男の子だそうで、元気に子宮内であちこち蹴っているそう胎動も激しいのだそうです。

また昨日は、夕方に妊娠30週の妊婦さんが来院しました。
この方はご縁のある方で、二本松の渡邊健先生が中学校の教壇に立っていた時の教え子さんでした。

もともと不妊で当院に来院されましたが、数回の治療で妊娠された方です。当院の妊娠基準からすると、『当院の治療は関係なく』自然に妊娠された方で、当院の妊娠率には関係のない方となります。

当院の妊娠数計算の基準

当院では自然妊娠や人工授精の妊娠数を計算する場合、1)治療期間に最低1回の月経期間が入ること。最低4回の治療を行っていることとしています。この方は3回の治療後、4回来院の際に妊娠が判明した方でした。

大寒波とかで、雪も降って治療室もヒマで(;^ω^) そろそろこの基準に照らし合わせ、当院の妊娠率についてカルテを数えてみようかな?と思います。