不妊治療で大切なこと1)不妊鍼灸のエビデンスについて

10月2日(月)より、木曜日以外の平日(月・火・水・金)の最終受付を19時30分まで延長します。
(当日の18時までにご連絡ください)

9月23日(土・祝)は、午前中のみ診療します。まだ少し空きがありますのでぜひご利用ください。

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来月、仙台国際センターで開催される第39回全日本鍼灸学会東北支部学術集会の講義メモです。

1)不妊鍼灸のエビデンスについて

ながらく有料制であったPubMed。世界中の医学研究の論文を登録してあり、数年前から無料で検索できるようになりました。

大本はアメリカの厚生労働省にあたるNIHが運用しており、当院でもよく使います。ブラウザの通訳機能バンザイですね。

まずPubMedで検索します。キーワードは『infertility(不妊症) + acupuncture(鍼)』

検索の条件は、
1)Clinical Trial(臨床試験)
2)メタアナリシス
3)RCT(ランダム化比較試験)
4)レビュー
5)システィマティック・レビュー

以上で調べました。
すなわち、多数の患者を扱った臨床試験や論文、多数の論文を比較検討した論文の数は213編ありました。

結果は →(短縮URL) https://is.gd/qEJnJ1

結果からいうと総論的に不妊症に『有効』であり、エビデンスがあると言えます。

鍼灸師の先生方には、不妊鍼灸には『エビデンスがある』と自信を持っていただきたいです。

代表的なシスティマティック・レビューを挙げてみます。

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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35222669/
”女性不妊症の治療法としての鍼治療:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタアナリシス”
Kewei Quan Chuyi YuXiaohui WenQiuping LinNaiping Wang Hongxia Ma
PMID: 35222669 PMCID: PMC8865966
DOI: 10.1155/2022/3595033 2022年

結語:”7,676 人の参加者による 27 件の研究が含まれていました。その結果、(鍼灸)介入群は出生率(RR = 1.34; 95% CI (1.07, 1.67); P < 0.05)、臨床妊娠率(RR = 1.43; 95% CI (1.21, 1.69))などの転帰においてより多く寄与していることが示された。 ; P < 0.05)、

生化学的妊娠率 (RR = 1.42; 95% CI (1.05, 1.91); P < 0.05)、

継続妊娠率 (RR = 1.25; 95% CI (0.88, 1.79); P < 0.05)、

有害事象 (RR = 1.65; 95% CI (1.15, 2.36); P < 0.05)、

および移植率 (MD = 1.19; 95% CI (1.07, 1.33); P< 0.05)、対照グループと比較した場合、その差は統計的に有意です。”

ほか

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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18843737/
”鍼治療と妊娠補助”
Ying C Cheong Ernest Hung Yu NgWilliam L Ledger
PMID: 18843737 DOI: 10.1002/14651858.CD006920.pub2
2008年

結語: 胚移植 (ET) 当日に鍼治療を行った場合、出生率 (OR 1.89、95% CI 1.29 ~ 2.77) に利点があるという証拠がありますが、ET の 2 ~ 3 日後に鍼治療を行った場合にはそうではありません ( OR 1.79、95% CI 0.93 ~ 3.44)。

採卵前後に鍼治療を行った場合、妊娠結果に利益があるという証拠はありません。

ほか

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”生殖補助医療(ART)を受けていない不妊女性への鍼治療:系統的レビューとメタ分析”
Liu Yun Wu Liqun Yao ShuqiWu ChunxiaoLu Liming Yi Wei 
PMID: 31335705 PMCID: PMC6709164 DOI: 10.1097/MD.0000000000016463
2019年

結語:妊娠率は、対照群と比較して、治療により有意に改善されました(RR = 1.84、95% CI 1.62 ~ 2.10、P < 0.00001)。

サブグループ分析の結果、純粋な西洋医学による介入と比較すると、鍼単独、鍼治療と西洋医学、鍼治療と中国医学、または鍼治療と中国医学と西洋医学のいずれの介入であっても、これらのサブグループすべてで有意な改善が見られたことが示されました。

不妊症の種類に応じたサブグループでは、多嚢胞性卵巣症候群、卵管性不妊症、排卵障害などの原因による不妊症が大幅に改善されたことが示されました。

さらに、排卵率と子宮内膜の厚さが大幅に増加しました。LHレベルは明らかに低下していました。

さらに、鍼治療を行うことで、悪影響が少なくなりました。

ファネルプロットにより、出版バイアスが存在する可能性があることが明らかになりました。含まれているすべての試験には、割り当ての隠蔽、参加者と職員の盲検化、結果評価の盲検化、選択的報告、およびその他のバイアスの側面において不明確なリスクがありました。ランダム配列生成におけるリスクが不明瞭であると評価された研究は 1 件のみでした。

不完全な結果データでは、1 件を除いてすべての研究が低リスクでした。

ほか、36編(合計39編)のシスティマティック・レビューがありますが、ほとんどの論文で鍼灸が有効と書かれています。

ただし今後多くの研究を重ねて検証していく必要がある、と書かれているものが多い印象がありました。

また多嚢胞性卵巣、鍼灸内膜症関連でも不妊に関しては鍼灸は有効、というものがありました。後日紹介します。

なお、こうした不妊鍼灸に関しての報告は近年になってから多くなった印象があります。