「鍼灸の効果のある疾患」カテゴリーアーカイブ

鍼灸治療がストレスに効果のあるエビデンスについて

当院では、不妊治療から痛みの治療、うつやパニック障害、自律神経失調、脱毛など幅広い治療を行っています。

こうした疾患は特にストレスの影響が大きく、長期にわたるストレス状態はさまざまな慢性病を引き起こします。

一方、ストレスに対しての鍼灸の効果はだいぶ解明されていて例えば鍼灸治療により、セロトニンやドーパミンの分泌が増えるといった報告が多くあります。

下記はその研究です。

一部に変化はなかったという報告がありますが、赤いマーキングのところが増加したといった効果です。

出典は臨床神経学雑誌第52巻11号です。(伊藤和憲先生報告)

私が懇意にさせていただいている研究者の先生も名を連ねています。

クリックして拡大 →

セロトニンは人間の情動に関与し、うつ状態の方は明らかに減少し、ドーパミンなどは少なくなると行動に影響があります。

西洋医学的な治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)などを使って、脳内のセロトニン濃度を上げるような治療も主流です。

しかし、薬剤中止の際の離脱作用が強く、さまざまな副作用があります。

鍼灸治療は副作用もなく、安心して長期にわたって継続できますし、自然にセロトニン濃度を上げることができるのです。

またドーパミン濃度が上がることは、例えばパーキンソン病の予防につながると思います。

冬季は日照も少なく、脳内のセロトニン濃度が下がるといわれています。

ぜひ鍼灸治療をおすすめいたします。

最近増えて来た過敏性腸症候群(IBS)

当院では30年前から潰瘍性大腸炎(UC)を研究テーマにして診療していました。

https://www.sanpei89in.com/study/uc.html

当時は潰瘍性大腸炎の発症率は10万人あたり3人〜5人と言われ稀な疾患でした。

鍼灸治療の報告は皆無であり、上記リンクの一例報告ながら当方の東北鍼灸学会での発表は大変注目されました。

鍼灸治療開始時の潰瘍性大腸炎の大腸カメラ像
白苔・黄苔の覆う、大腸表面。潰瘍性大腸炎の炎症像です。 福島赤十字病院(当時)・栗原陽一医師提供
鍼灸治療により、回復してきた大腸。大腸カメラ像
鍼灸治療により、改善してきた大腸。 福島赤十字病院(当時)・栗原陽一医師提供
数年にわたる鍼灸治療で緩解状態にある潰瘍性大腸炎の大腸カメラ像
鍼灸治療により緩解状態となった潰瘍性大腸炎の大腸カメラ像。 福島赤十字病院(当時)・栗原陽一医師提供

また当時は非常に珍しかった、鍼灸師と内科専門医の医療連携治療ということでも注目されました。当時お世話になった福島赤十字病院の栗原陽一医師には、今でも深く感謝しています。

さてタイトルの過敏性腸症候群ですが、上記で紹介した潰瘍性大腸炎と違う疾患ながら、なかなか厄介です。

過敏性というからには、多分に体質が関係します。また小学校~中学校あたりでの発症例は、起立性調節障害と同時に発症することもあり、不登校や無気力など、排便異常・腹痛などのほか実に多彩な症状を呈します。

当院では、これまで長年研究してきた潰瘍性大腸炎に対するさまざまな治療法を過敏性腸症候群に応用し、なかなか良い成績を挙げています。

腹痛の回数、排便の回数など、週に1回の治療を3ケ月程度行うとかなりの重症例でも改善します。

改善していけば、2週に1回程度の管理治療に移行しますが、これを1年程度続けると、病院から出されている薬が減薬や中止になったりし、やがて体質も改善して治ります。

一次的な冷えでお腹を壊しすぐ治るというものではなく、過敏性腸症状群は経過も大変長く、学童期と重なると不登校などにつながりやすく、お子様の一生にも影響します。

鍼灸は効果が高いですが、西洋医学的な治療と合わせ、体質改善まで見据えた長期的な治療が必要です。

 

男性不妊・男性妊活での鍼灸の効果

不妊には、男性に原因がある割合は約5割あります。

近年、女性の卵子老化が大きな問題となって取り上げられており、そういう話題はよく見聞します。

一方、いまだに男性については加齢による精子の劣化や精液初見の悪化など話題になることが少ないように思います。

実際には、男性も女性同様、同じ男性であっても年齢によって大きく悪化していきます。

男性不妊かどうかの線引きは、WHOの精液所見基準があります。

最新版は2021年版がありますが、今でも国内で多く使われているのは2010年版です。

WHOで男性不妊の基準を決める際の『基準値』は下記グラフのような研究から導き出されています。

出典:オックスフォード大学出版局
Human Reprodacution Vol16、P231-P245、2010

結婚などで過去1年以内に自然妊娠された、世界5大大陸8か国、1,953人を対象に、また比較として世界5大大陸5か国の男性965名を比較群として調査したものです。

下限・上限それぞれ2.5%をカットした95%信頼区間で、精液の量では2.0ml、精液濃度では1500万匹/ml、精子の運動率では50%をそれぞれ下回った群では1年以内に自然妊娠者がいなかった、というものです。

現在は11年ぶりに改訂された2021年版となり、それぞれ1.4ml、1400万匹/ml、40%、となっています。

非常に大切なことは、ここで『基準値』といわれているのは、グラフのピンクに染められた縦帯の付近であり、『これ以下だと自然妊娠できない』という『最低基準』です。

ですから、精液所見を調べた際、主治医が『基準を満たしています』みたいなことを言われても、まずは数字を確認してみましょう。

参考に、国内では国際医療福祉大学の岩本教授の調査報告が有名です。
出典:ブリティッシュ・メディカル・オープン
Teruaki Iwamoto, et al. BMJ Open. 2013.DOI: 10.1136/bmjopen-2012-002223
1999年から2002年にかけて札幌、大阪、金沢、福岡で不妊治療を実施していないで妊娠したカップルの日本人男性(20~45歳 792名、年齢中央値31.4歳)の精液を調査したもの。

結果:上記国内4都市の男性50パーセンタイル中央区間では、精液量3ml、精液濃度8,400万匹/ml、総運動率は66%でした。

なお、最近当院で妊活目的で3ケ月間週に1回しっかり通院治療した方の精液所見の変化をビジュアルでご覧ください。

動画の左側は治療開始時のもので、右は週に1回・3ケ月治療後のものです。

動画では約3倍の改善が確認できると思います。

この方は治療前の精液所見では男性不妊とは言えないレベルですが、熱心に治療に通われ、このように大きく改善しました。

もちろん、精液の量、数、運動率が改善することは妊娠しやすくなったことを示唆します。それはずっと上で示したグラフで理解できるでしょう。

当院では客観的に判断できるよう、当院に通院されている方で希望された方には精液測定を無料で行っています。

 

 

鍼灸治療のエビデンス(効果の根拠) その4 脳血流の改善の効果について

当院では、患者様同士と当院従業員の院内感染を防ぐ観点から、当分の間、風邪症状(のどの痛み、せき、くしゃみ、発熱、悪寒、倦怠感など)のある方の来院の自粛をお願いいたします。

3月の診療案内 →

 

鍼灸のエビデンスの第4回は、脳血流を改善する効果について、です。

脳血流の改善は、脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)の後遺症への治療効果を示唆します。

また、脳の中心部の血行改善は視床~脳下垂体などへの血行改善が期待でき、ストレスの改善を示唆します。

ストレスについての鍼灸の効果は、おいおいと別の機会に書いていきたいと思います。

今回は脳全体への血行改善の根拠(エビデンス)です。

脳血流の改善の要点は、、、↓

・脳局所血流は代謝性調節と神経性調節がある

・麻酔ラットにおいて顔や手足への鍼灸刺激は大脳皮質局所血流を増加させることが示されている。この機序には頭蓋内のコリン作動性血管拡張神経が関与する。

・健常者において手足の経穴(ツボ)への鍼刺激が脳血流を増加させることが示されている

更に詳しくは、下記リンクより文献をご覧ください。
実に多くの基礎研究があります。

もっと詳しく、鍼灸が脳血流に及ぼす作用 →

 

脳血流の改善は、痛みや不安などを軽減または解消し、老化を遅くする効果につながります。

当院では腰痛や肩こり、不妊治療などあらゆる治療で脳血流の改善を意識した治療を行っています。

痛みや不安、しびれなどのあらゆる苦痛など、脳で感じています。

鍼灸治療は、全身の状態を改善して疾病を治していきますから、あらゆる疾患の治療には、脳血流改善の改善を行う必要があります。

お子様のおねしょ・夜尿症に

当院では、患者様同士と当院従業員の院内感染を防ぐ観点から、当分の間、風邪症状(のどの痛み、せき、くしゃみ、発熱、悪寒、倦怠感など)のある方の来院の自粛をお願いいたします。

久しぶりに治療日記です。

数年続くオネショ、夜尿症で小学校高学年生が通われています。

オネショしても目が覚めず、それが毎晩毎晩、ずっと続くという超重症例です。

通常の小児鍼では歯が立たず。

そもそも小児科の治療でも全く効果がなかったといいます。

ならば必殺技で。

足の厥陰肝経という経絡にある、大敦(だいとん)というツボの取穴を少しずらした位置で、線香を使った灸を行います。

そのほかのツボも使いますが、熱さを感じる手前で線香を離すを繰りかえします。

効果絶大で、治療は週に2回。2週目からオネショ回避率50%を越えてきました。

いつか学会で発表しましょう。

深谷灸法の名穴です。

※当院のベッドシーツは治療後毎回アルコールで清拭できる抗菌シーツを使用しています。

冬は精液測定は慎重に

当院では、患者様同士と当院従業員の院内感染を防ぐ観点から、当分の間、風邪症状(のどの痛み、せき、くしゃみ、発熱、悪寒、倦怠感など)のある方の来院の自粛をお願いいたします。

当院では、第1の得意治療として不妊治療を標榜しております。

女性が治療に来院するのが非常に多いですが、男性不妊も対応しています。

男性不妊は端的にいえば精液・精子の状態を改善することを目的にしています。

そのほかは性交障害やEDなどにも対応します。

女性不妊では複雑なホルモン測定など、血液検査が必須となりますが、男性の精液測定は射精された成績を顕微鏡で調べるだけですので、割合簡単に評価できます。

この日の測定は30代の方でした。
(患者様には許可をいただいて掲載しています)

測定してみると、精液濃度(数)や総運動率に問題なさそうですが、厳冬期に当院まで1時間かけて射精した精液を持ち込まれたため、全体の印象としては『運動率はあるが、直線運動がすくなく全体的に元気が少ない印象がある』という感じでした。

精液を持ち込んで検査する場合、冬季は精液の容器はやや温めた状態のほうが良いようです。

温度としては、37度を越えないくらいで良いでしょう。
容器をタオルなどで覆い、その上から使い捨てのカイロで温めると良いようです。

当院には精液を測定評価できる設備があり、常に客観的なデータを蓄積して男性不妊のみならず、不妊症に対する鍼灸治療を行っています。

鍼灸治療のエビデンス(効果の根拠) その3 神経血流の改善の効果について

2月の診療案内(日曜休日診療含む)→

当院では、患者様同士と当院従業員の院内感染を防ぐ観点から、当分の間、風邪症状(せき、くしゃみ、発熱、悪寒、倦怠感など)のある方の来院の自粛をお願いいたします。

痛みの鎮痛効果、痛み止めだけではなく、筋肉の血流を改善して疲労や痛みを改善する鍼灸の効果について、その1 その2と書いていきました。

今回は、神経血流の改善の効果について鍼灸の働きを書いていきたいと思います。

・アドレナリンによる神経収縮 → 末梢の血流減少
末梢神経血管の血管収縮神経には、アドレナリン作動性の神経繊維が存在すると言われている。
この神経が活動すると、神経末端よりノルアドレナリンが放出され、血管平滑筋のα受容体に作用して血管を収縮させ、局所神経血流を減少させる。
逆にこの神経の活動が低下すると血管は緩んで拡張し、局所神経血流は増加する。

・血管拡張神経の活動 → 神経血管の拡張
血管拡張神経には遠心性のコリン作動性血管拡張神経と求心性の血管拡張神経があると考えられている。
求心性の血管拡張神経は、求心性神経の逆行性興奮によって起こるもので、軸索反射機転によるものと考えられている。
すなわち、逆行性興奮により求心性の神経末端からカルシトニン遺伝関連ペプチド(CGRP)が分泌され、それが末梢神経血管のCGRP受容体に作用して血管を拡張させる。
※鍼灸刺激により軸索反射を介し、CGRPの分泌が起こり、神経血管の拡張→神経血管の血流改善が起こる。

 

特にしびれや冷えなどの改善=末梢神経血管の神経性調節について

・アドレナリン作動性の血管収縮神経の末端からノルアドレナリン(N A)が分泌され、血管のα受容体に作用すると末梢神経血管は収縮して局所神経血流は減少する。

・一方、コリン作動性の血管拡張神経の末端からはアセチルコリン(ACh)が分泌され、ムスカリン受容体に作用すると末梢神経血管は拡張して局所神経血流は増加する。
※鍼灸刺激は、コリン作動性神経を活性化させ、アセチルコリンの分泌を増やす効果があります。

・求心性神経を逆行性に興奮させる軸索反射機転により神経末端からCGRPが分泌され、CGRP受容体に作用すると末梢神経血管は拡張して局所神経血流は増加する。
※鍼灸は刺入部位付近から支配領域の脊髄より軸索反射を起こし、CGRPの分泌を起こして血流を改善します。

もうちょっと知りたい方には、当院ホームページ内の下記ページをご覧ください。

しびれなど、神経の血流改善に対しての鍼灸治療の効果の根拠 →

鍼灸治療のエビデンス(効果の根拠) その2 末梢血流の改善(筋肉の血流改善)について

2月の診療案内(日曜休日診療含む)→

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前回は鍼灸の痛みに関しての効果の根拠を書きました。

痛みは、1)原因があっての痛みと、2)原因が解決しているけど痛みだけが残っている痛みに分けられます。

1)は、筋肉の疲労によって血行不良が起こり、筋の栄養・酸素不足によって起きているものや、打撲や損傷などが挙げられます。そのほか、内臓の異常によって起こる内臓痛や、内臓が悪くて腰や背中に痛みが出る関連痛があります。

また腰椎ヘルニアや神経痛なども含みます。

2)は、上記の原因があった頃に痛み出し、すでに原因は治っているにもかかわらず痛みだけが残っている『慢性痛』を言います。

先に書いた
鍼灸治療のエビデンス(効果の根拠) その1 痛みについて

↑以上は、麻酔的効果に関してのもので、特に2)に有効ですが、『鍼を打つと血行が良くなる』という特性は、疲労や血行不良の筋肉を健康に改善させるため、原因を治す原因療法になります。

 

末梢 

末梢血流改善について

鍼を打つと筋肉の血行が改善する効果には、下記の働きがあることが証明されています。

体性感覚刺激による、筋の血流改善効果
1)脳を介する全身性反射調節、
2)脊髄を介する脊髄性反射性調節、
3)軸索反射による局所性調節、高位中枢を介する調節などがある。

当院で多用する電気鍼による筋の血流改善効果
鍼通電(電気鍼)刺激の全身性筋血流の神経機序として、交感神経α受容体を介して腎臓を含めた内臓血流の増大や減少を起こすことにより、血圧の下降または上昇させて間接的に皮膚および筋血流を増減する。

CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)やサブスタンスPなどの科学物質産生による血管拡張
鍼灸刺激による(ツボなど)局所の血流増加は、(ツボなどの鍼灸刺激による)体性感覚神経刺激による軸索反射機転によるもので、CGRPを介して筋血流を増加させる。

鍼灸は単に痛み止めだけでは終わらず、筋の疲労回復や凝り改善を血流の改善から行っているのです。

 

 

もうちょっと知りたい方には、当院ホームページ内の下記ページをご覧ください。

筋の血流改善に対しての鍼灸治療の効果の根拠 →