「鍼灸のエビデンス」カテゴリーアーカイブ

11月12日の講義内容

11月の診療案内です。
https://sanpei89in.com/blog/?p=3746

11月3日(金・祝)は、午前中のみ診療します。
11月4日(土)は、朝8時~10時までの受付診療となります。
(※午後から会津医療センター三潴忠道教授の最終講義と記念祝賀会へ出席します)

11月5日(日)は、朝10時~正午まで受付診療します。
あらかじめご予約をお願いいたします。

11月12日(日)は、本日のブログの記事の通り、学会で講演しますので休診となります。

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11月12日(日)は、仙台で全日本鍼灸学会第39回東北支部学術集会が開催されます。

そこで不妊症に関する講義を依頼され、時間を見てはスライドを作成しています。

講義の対象は学生や不妊鍼灸のビギナーです。

不妊鍼灸を行うためには、様々なことを学ぶ必要がありますが、まず、不妊鍼灸に関するエビデンスを知ることが必要だと思います。

何しろ、まだまだ不妊鍼灸にエビデンスはない、と、俗世間では信じられているからです。

持ち時間は質疑応答(10分)を入れて1時間、正味50分です。 なので、講義の時間は不妊鍼灸のイロハ。

大事なところだけお話しし、今後勉強していく方向をお示しすることとします。

鍼灸治療を受けに来る妊娠希望、挙児希望のカップルへは、鍼灸治療は2つを目指します。

1)自然妊娠できる、出産できるような体つくりを行う。

鍼灸治療は東洋医学です。未病治を掲げる東洋医学は、偏った体質を中庸に戻すことを目指します。

ながらく妊娠できない、ということは、医学的に問題が見つからなくても加齢や生活習慣の偏りを抱えていることがあります。

2)西洋医学的治療の補完を目指す

例えば西洋医学的に治療を行っていても、なかなか妊娠しない方もいます。

何度も体外受精を受けているが、なかなか妊娠できない。採卵を行うが胚盤胞まで到達できない。卵の質が悪い、など、最先端の治療を受けていてもなかなか妊娠できない方が鍼灸院にはよく来ます。

こうした方へ、一定期間鍼灸を行うと、良い卵が採卵できるようになったり、胚盤胞での凍結ができるようになったりします。 鍼灸は、西洋医学のお手伝いもできるのではないか、ということをお示しします。

実際に、鍼灸治療により採卵成績の改善が認められた研究や、その内容を紹介します。

もう8年前になりますが、鍼灸の大きな学会を郡山で開催しました。

その際、私は不妊症についてのセッションを提案しましたが、『不妊鍼灸にはエビデンス(根拠)が乏しい』ということで、『それでもまぁシンポジウムなら、』ということで、学会の特別演題で企画していただきました。 https://sanpei89in.com/blog/?p=2988

あれから8年。というか、準備を始めたのがさらに2年以上前ですから、今から10年以上前になります。

その後の10年で世界中でこのように不妊(infertility)に対する鍼灸(acupuncture)のエビデンスが増えました。

たとえば2022年にでたシステマテック・レビューでは、

27のサブ研究で合計7,627人を比較したものがあります。

鍼灸を行った場合、シャム鍼(偽の鍼)、無治療グループと比較するとRR(=relative risk, risk ratio:リスク比)が1.34とあり、鍼を行わないと1.34倍出生できない。1.43倍臨床妊娠(胎嚢確認)できない。こうした結果になった研究があります。

臨床妊娠率のオッズ比を表すプロットでは下記となります。

不妊鍼灸を勉強しようとする初学者の皆さん、学生の皆さん、 不妊鍼灸にはエビデンスがあります。

しっかり勉強して良い結果を得て、学会でどんどん発表しましょう。

そして日本からたくさんの質の高い研究を世界へ発出していただきたいと思います。

そういった内容で11月12日は仙台国際センターで講義します。

11月12日のスライドを作っております

不妊症の鍼灸治療で、エビデンスはあるのか?

PubMedで調べると、1989年から3023年現在まで、215編のCT(臨床試験=Clinical Trial)、MA(メタアナリシス)、RCT(ランダム化比較試験)、Rv(レビュー)、決め手となるSR(システマティック・レビュー)があります。

Rv(レビュー)とSR(システィマティック・レビュー)は、論文としての信憑性が高まる研究で、すでに発表されている論文を集めて評価したものになります。

10年前はあまりRvもSRもなく、なるほど不妊鍼灸にエビデンスを語ることが難しかったようですが、ここ数年はだいぶ出てきたように感じます。

不妊鍼灸にエビデンスはある!

こうした内容にスライドを仕上げていきます。

 

機能性消化疾患診療ガイドライン2020 過敏性腸症候群(IBS)(改定第2版)で鍼灸が推奨されています

10月22日の日曜診療は、朝8時30分から2名のみ可能です。ほか29日日曜日は、朝8時から正午までとなります。

日曜診療は原則前日までに予約が必要で、急患の場合でも朝9時までにご連絡ください。(予約分の診療が終わった段階で終了します)

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勉強でよく見ることの多いMindsガイドラインライブラリですが、疾患別に標準治療や代替医療までの推奨度のほか、詳しい病因などが書かれています。

割と多い疾患で、過敏性腸症候群(IBS)というものがあります。

潰瘍性大腸炎やクローン病などは『炎症性腸疾患』という区分けになりますが、過敏性腸症候群などは『機能性』消化疾患に区別されています。

https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/ibs.html

ここで、診療ガイドラインが掲載されていますが、標準治療を行って効果が見られないもの、特に抗うつ剤を使って効果が見られない場合、鍼灸を提案する、とあります。

ぜひ、上記PDFで『CQ(クリニカル・クエスチョン)30』の『IBSに補完代替医療は有用か?』を探してみてください。

IBSの患者さんの約5割は、3種類以上の補完代替医療を受けており、その事実は主治医に教えていない、とも書いています。

いまは鍼灸には理解を示す医師も多く、だんだんと医師側からも鍼灸を薦めるケースも増えるのでしょう。

我々鍼灸師は医師と基礎的な医学教養で天と地ほどの差があります。

この差を少しでも縮める努力が必要です。

不妊治療で大切なこと3)子宮系、着床成績の向上に鍼灸は寄与するか

10月2日(月)より、木曜日以外の平日(月・火・水・金)の最終受付を19時30分まで延長します。 (当日の18時までにご連絡ください)

10月1日(日)は、正午まで診療いたします。 10月の日曜と祝日診療は、1日、8日、9日、15日、29日です。
※日曜診療は、原則前日までに予約が必要です。急患の場合でも朝9時までにご連絡ください。

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11月の全日本鍼灸学会東北支部学術集会で講演する内容の整理シリーズです。これをもとにスライドを組み立てていきます。

さて、良い胚を移植しても着床しない妊娠できない。

卵が先か子宮が先か。 体外受精では良い胚の獲得と並んで永遠のテーマだと思います。

近年は胚盤胞の細胞をいくつか採取して染色体の異常を検査する着床前スクリーニング・着床前診断を行う方が増えてきました。

何度も胚移植しても妊娠に至らないのは、可能性としては一番先に疑うのは胚の良否だと思います。

しかし、遺伝子を扱ううえで倫理上様々な制限があり、そう簡単に受けられないのが染色体の検査です。

さて、胚に何の問題もないと前提しての話になります。 何度も胚移植して着床しない・妊娠できないのは、子宮側に何らかの問題があると考えるのは普通のことでしょう。

子宮側の視点で反復着床障害(RIF=Repeated Implantation Failure)という病態を検査するには、

  • ALICEテスト 子宮が慢性子宮内膜炎に罹患していないか、の検査。慢性子宮内膜炎に罹患していると、まず妊娠しない着床しないと言われています。
  • ERAテスト 子宮は胚盤胞を着床させるのは数時間程度と短く、移植のタイミングがずれていないか調べるテストです。
  • ほかEMMAテスト、通常の子宮鏡による子宮内検索など行うようです。

さて、鍼灸による着床改善に関しての論文は?

あります。イエスPuMed!

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33613685/

The Effects of Acupuncture on Pregnancy Outcomes of Recurrent Implantation Failure: A Systematic Review and Meta-Analysis

日本語訳タイトル「再発性着床不全の妊娠転帰に対する鍼治療の影響:系統的レビューとメタ分析」

2021年の、最近の研究です。

目的: 体外受精・胚移植(IVF-ET)を受ける再発性着床不全(RIF)患者に対する鍼治療の有効性と安全性を系統的に評価し、臨床医と患者に信頼できるガイダンスを提供することを目指す。

【方法】 国内外の医学雑誌を検索し、IVF-ETを受けているRIFに対する鍼治療のランダム化比較試験(RCT)の文献を収集した。

メタ分析には RevMan 5.3 ソフトウェアが使用され、含まれた研究の品質を評価するためにコクランのバイアスリスク評価ツールが使用されました。

結果: 最終的に基準を満たす 7 つの文書が含まれました。 その結果、臨床的妊娠率(RR = 1.90、95% CI (1.51, 2.40)、 P < 0.05)、生化学的妊娠率(RR = 1.59、95% CI (1.27, 1.99)などの転帰において介入群(鍼灸群)の方がより寄与していることが示されました。、P < 0.05)、

胚の着床率(RR = 1.89、95% CI (1.47、2.45)、P < 0.05)、子宮内膜の厚さ(MD = 1.11、95% CI (0.59、1.63)、P < 0.05)の場合対照群と比較すると、その差は統計的に有意です。

胚移植の数と子宮内膜の種類に関して、鍼治療グループと対照グループの間の差は統計的に有意ではありませんでした。

結論: RIF患者に対する鍼治療は、患者の妊娠転帰を改善する可能性がある。 比較的有効で安全性が高く、臨床応用に適した治療法です。

ただし、含まれている研究の質は十分ではないため、このメタ分析の結論は注意して扱う必要があります。 証拠レベルの向上のためには、高品質で大量のサンプルを備えた二重盲検RCTの増加が期待されます。

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上記は7文献を検討したレビューになります。

鍼灸を行うと、体外受精での着床率と妊娠率が改善するようですが、今後さらにサンプル数を多くした研究を行う必要がある、ということです。

さて一方、世に出る前の研究ですが、京都のなかむら第二針療所の中村一徳先生の研究では、先に紹介した胚盤胞獲得率について鍼灸介入前後での研究を一部紹介しました。 https://sanpei89in.com/blog/?p=3658

中村先生の研究で鍼灸を行った方の着床率について研究したものがあります。

胚側に問題のないことはPGS合格胚を移植することでクリアしており、純粋に子宮側から見た着床のみ視野に入れた研究になります。

  • PGS(着床前スクリーニング)で染色体に問題のない胚であると確認した場合、着床率は60パーセント台。
  • 鍼灸治療を十分行ってPGS確認後の胚を移植すると80パーセント台の着床率に向上する。

早く論文化しましょう、なんでしたら統計解析と海外への論文投稿のお手伝いに会津医療センターを紹介しますよ、って言ってあり、本人もその気になってきているので(笑)、だんだんと世界に出る研究になると思います。

結論。

着床改善に、鍼灸は有効である。しかし、ERA、EMMA、ALICEテストなど陽性の場合、もちろん医療による治療が必要なのは言うまでもありません。

パーキンソン病など神経難病の鍼灸治療 

10月2日(月)より、木曜日以外の平日(月・火・水・金)の最終受付を19時30分まで延長します。 (当日の18時までにご連絡ください)

10月1日(日)は、正午まで診療いたします。
10月の日曜診療は、1日、8日、15日、29日です。
※日曜診療は、原則前日までに予約が必要です。急患の場合でも朝9時までにご連絡ください。

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昨日は夜9時から、ネットで講習会を受講しました。

演題はパーキンソン病などの神経難病に対する鍼灸治療でした。

講師は新潟医療福祉大学教授の、江川雅人先生です。

新潟医療福祉大学には、鍼灸健康学科オープンの際に内覧会に招待され、江川教授と名刺交換もさせていただいています。

パーキンソン病とは何らの原因で中脳からドーパミンが減少して起こる神経難病ですが、レビー小体と言われる病的たんぱく質が大脳黒質に蓄積されているということでした。

またレビー小体が大脳皮質に蓄積されると、レビー小体型認知症になるということでした。

パーキンソン病と鍼灸について

パーキンソン病で鍼灸に来院する患者さんは珍しくなく、すっかり治ってしまう疾患ではありませんが、5回10回と治療を蓄積していくうち、筋拘縮や歩行のぎこちなさが改善する方が多いです。

また治療の目指すところは、鍼灸治療を継続して、薬が増えないよう、できれば減薬できることを目指すことだと、江川教授は言います。

薬の副作用では、便秘、抑うつ傾向などがよくあるそうで、じつはこの症状はもともとパーキンソン特有の症状です。

 

パーキンソン病ではないが、神経難病での鍼灸のエビデンスについて

レビー小体型認知症の話が最初に出ましたが、日本神経学会が出版した『認知症診療ガイドライン2017』で、実は鍼灸が推奨されています。

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf
※PDFを『鍼』で検索してみてください。

元文献は、アルツハイマー型認知症での鍼灸の効果ですが、薬物治療と有意差なし=同等、ということです。

鍼灸は薬物と違い、長年続けていて治療の頻度を上げなければ効果が出なくなる、とかそういうことはありません。薬はだんだん効かなくなるので、そのうち増量することが良くあります。

話しは戻って、パーキンソン病に対する鍼灸の意義に、治らなくとも症状を軽くし、薬が増えることを防止し、副作用が出にくくするといった目的があります。

神経難病には様々な疾患がありますが、鍼灸は副作用もなく安心して長期間続けることができます。習慣化して治療の回数が増えることも私は経験していません。

このような疾患がある方は、ぜひご安心して鍼灸を受けてください。

不妊治療で大切なこと 2)卵巣系、採卵成績の向上に鍼灸は寄与するか

10月2日(月)より、木曜日以外の平日(月・火・水・金)の最終受付を19時30分まで延長します。 (当日の18時までにご連絡ください)

10月1日(日)は、正午まで診療いたします。
※日曜診療は、原則前日までに予約が必要です。急患の場合でも朝9時までにご連絡ください。

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11月に全日本鍼灸学会東北支部学術集会で講義する内容の2番目。

卵の質を改善する。採卵の成績を向上させることに鍼灸は効果があるか。

多分、卵質の改善、採卵成績の改善とは、体外受精を受けている方、何度も受けている方は最大のテーマではないかと思います。

生物学では、受精する前は卵。受精してから『卵子』と呼ぶようになります。

受精する前の『卵』は1個の細胞ですが、染色体が普通の細胞の半分。22+1個の染色体が入っています。

ここへ、22+1個の染色体をもった精子が受精して、母方22+1、父方22+1の染色体が合わさり、44+2=46の染色体をもった1個の細胞の受精卵が出来上がります。

そして卵割と言われる分割を繰り返してやがて子宮の内膜に着床します。その後も細胞を増やしてやがて胎児ができていきます。

卵の質とは何でしょうか。

卵割を繰り返すには、膨大なエネルギーが必要だと言われます。1つは分割を繰り返すための栄養です。

これは検証することはできませんが、鍼灸をある程度行うと胚盤胞の獲得率が向上したり、採卵数が増えたりすることがあり、それが偶然ではない確率であったりします。そこから鍼灸の効果が推定できます。

PubMedでは、下記がありました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25854012/
腎虚型不妊症患者における鍼灸治療による卵子の質の改善

  • PMID: 25854012
  • 2015年のPubMed収載

方法: 腎不全(腎虚)として区別され、体外受精・胚移植(IVF-ET)を受けた年齢35歳から42歳の66例が、ランダムに観察群と対照群(各33例)に割り付けられた。

ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬を用いた長期プロトコールのIVF-ET療法が2つのグループに採用された。観察グループにて。

体外受精サイクルの月経 5 日目に、三陰交 (SP 6) に EA を適用しました。Zigong (EX CA 1)、Zhongji (CV 3)、Guanyuan (CV 4)。

対照群では、同じ経穴に偽鍼治療を適用しました。

処置は採卵日まで2日に1回与えられ、針は毎回30分間保持された。

腎不全症候群のスコア、良質卵子率の変化、2 つのグループで高品質の胚発生率と臨床的妊娠率が観察されました。

採卵日の卵胞液中のインスリン様成長因子-i(IGF-1)とIGF-2、および血清βエンドルフィンβ-EP)のレベルと、卵母細胞の品質との相関関係を2つのグループ間で比較しました

結果

1) 観察群では、治療前と比較して治療後の腎不全症候群(西洋医学的な腎不全ではなく、腎虚のこと)スコアが明らかに減少しました(P<0.05)。

観察群の治療後のスコアは対照群と比較して明らかに大幅に減少しました。 (P<0.05)。

2) 観察群の良質卵子率と良質胚率はいずれも対照群より高かった[81.3% (161/198) vs 57.6% (98/170)、59.8% (58/198) 97) vs 37.7% (26/69)、両方とも P<0.05]。

3) 対照群との比較。採卵日の卵胞液および血清β-EP中のIGF-1およびIGF-2のレベルはすべて観察群で明らかに増加した(すべてP<0.05)。

結論: EAは卵胞液および血清β-EP中のIGFの発現を効果的に改善し、高品質卵子率と高品質胚率を増加させ、腎不全(英訳のため本来は東洋医学の『腎虚』だと思われる)の症状を軽減します。

 

もう一つは、卵の染色体の質だと言われています。また精子にも不良生活や年齢による精子DNAの欠損が指摘されています。

染色体では鍼灸の出番はないと思われがちですが、この染色体の異常は『受精の際の偶然の異常』として出やすく、ここにも鍼灸は効果がありそうです。

不妊鍼灸ネットワーク、JISRAMを一緒に創設した仲間に、京都の中村一徳先生(なかむら第二針療所)がいます。

この先生の研究に、同じ卵巣刺激法を行っていた同一の患者さんで、鍼灸介入前後で採卵成績と胚盤胞獲得(到達)率を調べた世界的にも珍しい研究があります。

55人の患者さん。
鍼灸開始前 223採卵周期(回数) 採卵数838個
鍼灸治療後 180採卵周期(回数) 採卵数807個

40歳未満は、胚盤胞の獲得率が約3倍に。こんな研究があり、論文化して世界に発出していただきたいと思います。

 

ほか、このような研究もあります。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19873910/
卵巣反応不良患者の体外受精・胚移植(IVF-ET)に対する電気鍼治療の効果

  • PMID: 19873910
  • 2009

方法: IVF-ETを受け入れた60例を無作為に観察群と対照群に分け、各群30例とした。

2つのグループは両方とも排卵誘発のためのアンタゴニストスキームで治療され、観察グループには電気鍼治療介入も追加され、Guanyuan(CV 4)、Taixi(KI 3)、Sanyinjiao(SP 6)などが選択されました。治療後に 2 つのグループの治療効果を比較しました。

結果: 治療前には 2 つのグループ間に有意差はありませんでした。

観察群(鍼治療グループ)の腎不全(腎虚)の症状は治療後に大幅に改善され、血清エストラジオール(E2)値、受精率、卵子成熟率、良質胚率、着床率は観察群の方が群よりも優れていました。

ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)注射日の対照群(すべて P<0.05)。

観察群の卵胞液および血清中の幹細胞因子(SCF)のレベルは、対照群よりも有意に高かった(両方ともP<0.05)。

観察群の妊娠率は対照群よりも高く、観察群の中絶率は対照群よりも低かった。

結論: 電気鍼療法は、卵巣予備力が乏しい体外受精患者に対して良好な臨床効果があり、卵子の質と妊娠結果を改善することができます。

 

本日の結論。卵質の改善や採卵成績の向上に、鍼灸は効果があります。

不妊治療で大切なこと1)不妊鍼灸のエビデンスについて

10月2日(月)より、木曜日以外の平日(月・火・水・金)の最終受付を19時30分まで延長します。
(当日の18時までにご連絡ください)

9月23日(土・祝)は、午前中のみ診療します。まだ少し空きがありますのでぜひご利用ください。

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来月、仙台国際センターで開催される第39回全日本鍼灸学会東北支部学術集会の講義メモです。

1)不妊鍼灸のエビデンスについて

ながらく有料制であったPubMed。世界中の医学研究の論文を登録してあり、数年前から無料で検索できるようになりました。

大本はアメリカの厚生労働省にあたるNIHが運用しており、当院でもよく使います。ブラウザの通訳機能バンザイですね。

まずPubMedで検索します。キーワードは『infertility(不妊症) + acupuncture(鍼)』

検索の条件は、
1)Clinical Trial(臨床試験)
2)メタアナリシス
3)RCT(ランダム化比較試験)
4)レビュー
5)システィマティック・レビュー

以上で調べました。
すなわち、多数の患者を扱った臨床試験や論文、多数の論文を比較検討した論文の数は213編ありました。

結果は →(短縮URL) https://is.gd/qEJnJ1

結果からいうと総論的に不妊症に『有効』であり、エビデンスがあると言えます。

鍼灸師の先生方には、不妊鍼灸には『エビデンスがある』と自信を持っていただきたいです。

代表的なシスティマティック・レビューを挙げてみます。

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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35222669/
”女性不妊症の治療法としての鍼治療:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタアナリシス”
Kewei Quan Chuyi YuXiaohui WenQiuping LinNaiping Wang Hongxia Ma
PMID: 35222669 PMCID: PMC8865966
DOI: 10.1155/2022/3595033 2022年

結語:”7,676 人の参加者による 27 件の研究が含まれていました。その結果、(鍼灸)介入群は出生率(RR = 1.34; 95% CI (1.07, 1.67); P < 0.05)、臨床妊娠率(RR = 1.43; 95% CI (1.21, 1.69))などの転帰においてより多く寄与していることが示された。 ; P < 0.05)、

生化学的妊娠率 (RR = 1.42; 95% CI (1.05, 1.91); P < 0.05)、

継続妊娠率 (RR = 1.25; 95% CI (0.88, 1.79); P < 0.05)、

有害事象 (RR = 1.65; 95% CI (1.15, 2.36); P < 0.05)、

および移植率 (MD = 1.19; 95% CI (1.07, 1.33); P< 0.05)、対照グループと比較した場合、その差は統計的に有意です。”

ほか

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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18843737/
”鍼治療と妊娠補助”
Ying C Cheong Ernest Hung Yu NgWilliam L Ledger
PMID: 18843737 DOI: 10.1002/14651858.CD006920.pub2
2008年

結語: 胚移植 (ET) 当日に鍼治療を行った場合、出生率 (OR 1.89、95% CI 1.29 ~ 2.77) に利点があるという証拠がありますが、ET の 2 ~ 3 日後に鍼治療を行った場合にはそうではありません ( OR 1.79、95% CI 0.93 ~ 3.44)。

採卵前後に鍼治療を行った場合、妊娠結果に利益があるという証拠はありません。

ほか

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”生殖補助医療(ART)を受けていない不妊女性への鍼治療:系統的レビューとメタ分析”
Liu Yun Wu Liqun Yao ShuqiWu ChunxiaoLu Liming Yi Wei 
PMID: 31335705 PMCID: PMC6709164 DOI: 10.1097/MD.0000000000016463
2019年

結語:妊娠率は、対照群と比較して、治療により有意に改善されました(RR = 1.84、95% CI 1.62 ~ 2.10、P < 0.00001)。

サブグループ分析の結果、純粋な西洋医学による介入と比較すると、鍼単独、鍼治療と西洋医学、鍼治療と中国医学、または鍼治療と中国医学と西洋医学のいずれの介入であっても、これらのサブグループすべてで有意な改善が見られたことが示されました。

不妊症の種類に応じたサブグループでは、多嚢胞性卵巣症候群、卵管性不妊症、排卵障害などの原因による不妊症が大幅に改善されたことが示されました。

さらに、排卵率と子宮内膜の厚さが大幅に増加しました。LHレベルは明らかに低下していました。

さらに、鍼治療を行うことで、悪影響が少なくなりました。

ファネルプロットにより、出版バイアスが存在する可能性があることが明らかになりました。含まれているすべての試験には、割り当ての隠蔽、参加者と職員の盲検化、結果評価の盲検化、選択的報告、およびその他のバイアスの側面において不明確なリスクがありました。ランダム配列生成におけるリスクが不明瞭であると評価された研究は 1 件のみでした。

不完全な結果データでは、1 件を除いてすべての研究が低リスクでした。

ほか、36編(合計39編)のシスティマティック・レビューがありますが、ほとんどの論文で鍼灸が有効と書かれています。

ただし今後多くの研究を重ねて検証していく必要がある、と書かれているものが多い印象がありました。

また多嚢胞性卵巣、子宮内膜症関連でも不妊に関しては鍼灸は有効、というものがありました。後日紹介します。

なお、こうした不妊鍼灸に関しての報告は近年になってから多くなった印象があります。

不妊治療で大切なこと 11月の全日本鍼灸学会東北支部学術集会で講演します

10月2日(月)より、木曜日以外の平日(月・火・水・金)の最終受付を19時30分まで延長します。
(当日の18時までにご連絡ください)

9月23日(土・祝)は、午前中のみ診療します。まだ少し空きがありますのでぜひご利用ください。

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来たる11月12日(日)、仙台国際センターで開催される第39回全日本鍼灸学会東北支部学術集会で、講演させていただくことになりました。

演題は『初学者のための不妊症への鍼灸アプローチ』です。

持ち時間が1時間しかありませんので、リンクを貼ったカナケンさんのセミナー(3時間超)をかなり圧縮しないとなりません。

主に話す内容は、

1)不妊症のエビデンスについて

2)卵巣系、採卵成績の向上に鍼灸は寄与するか

3)子宮系、着床成績の向上に鍼灸は寄与するか

4)男性不妊の改善、精液所見の改善に鍼灸は寄与するか

5)気を付けねばならない症例、患者さんについて

この辺りでお話ししようと思います。
(1~5の各論は、追って追記していきます)

主に他人の研究結果の引用になりますが、先日紹介したPubMedに掲載される以前の、新鮮な研究を多数知っております。

副会長を務めた不妊鍼灸ネットワーク、副会長と監事(監査役)を務めたJISAM(日本生殖鍼灸標準化機関)の仲間たちの研究ですが、やがて世界のエビデンスに育っていくはずです。

来年開催で実行委員長を拝命している第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会では、教育講演でこの話題に触れ、シンポジウムでは福島県立医科大学生殖医療センターのセンター長(医師)、カウンセラー(鍼灸師)、香川県・厚仁病院生殖センター鍼灸ルーム長(鍼灸師)によるシンポジウムで、多職種連携の中での鍼灸師の役割を探ります。

採卵成績改善ではおそらく世界が注目するようなデータを持っている京都の鍼灸師によるランチョンセミナーを企画しています。

実技セッションでは、おそらく男性不妊では日本一の京都の鍼灸師の鍼灸実技を披露します。

生殖医療分野は、おそらくもっとも研究が進んだ医学分野だと思います。しかし、人間には生き物である以上加齢があり肉体の劣化があります。鍼灸はそもそも体の治癒力を使って様々な病気や書状に対応します。

ということは、加齢に対して若返りの効果もある。ということになるでしょう。最先端の医学技術に、古臭いですが古来の東洋医学を補助的に使う、現代医学を手伝わせていただくことで、不妊に嘆くカップルが一組でも少なくなるよう、統合医療を組み立てていきたいと思います。

 

 

不妊の鍼灸治療で大切なこと